2019.07.25 08:00

【新・英首相】強硬な離脱は前途多難だ

 英国内外の経済に混乱を引き起こす「合意なき離脱」のリスクがこれまでになく高まっている。英国の混迷はなお続きそうだ。
 欧州連合(EU)からの離脱問題で八方ふさがりに陥り辞任に追い込まれたメイ英首相の後任に、与党保守党党首に選ばれた離脱強硬派のジョンソン前外相が就任した。
 ジョンソン氏は党首選で、EUとの合意の有無に関係なく期限の10月末に離脱すると訴え続け、対抗馬を大差で破った。
 メイ政権は昨年11月にEUとの離脱合意案をまとめたものの、今年1~3月に下院で合意案を3回否決された。3月末の予定だった離脱期日は既に2度延期されている。
 国民投票から3年が過ぎても離脱の民意を実現できない保守党の支持は低迷している。党員は、失言がしばしば物議を醸す一方で、ロンドン市長を務めた知名度と大衆性を持つジョンソン氏に事態の打開を託した形といえる。
 とはいえ、合意なき離脱も辞さないジョンソン氏の前途は多難と言わざるを得ない。
 メイ政権の合意案で障壁になったのは、英領北アイルランドと陸続きのEU加盟国アイルランドとの国境管理問題だ。離脱後の2020年末までに解決しなければ、英全土がEU関税同盟に事実上残るとの取り決めで、離脱強硬派は「それでは主権を取り戻せない」と反発してきた。
 新政権はこの条項の見直しを求める方針だが、EUは再交渉を重ねて否定してきた。「合意なし」をカードにした強気の姿勢で譲歩を引き出す考えだろうが、EUとのチキンレースに陥る恐れもある。
 下院の構成もメイ政権と変わったわけではない。保守党内も強硬派と残留派を抱えており、閣外協力を得る地域政党の議席を足しても過半数割れ目前の窮状にある。
 加えて、ジョンソン氏の強硬姿勢には党内の反発も根強い。既に強硬離脱に反対する複数の閣僚が辞任する意向を表明している。
 新首相が合意なしに突き進むとみれば、野党は内閣不信任案を提案する方針だが、既に賛同を示唆している閣僚もいる。展開次第では、解散総選挙を迫られ迷走がなお深まる恐れもある。
 合意なき離脱には、新たに発生する関税や通関手続きで物流が混乱するリスクがある。日本企業も、英国向けの輸出にはEU向けと異なる手続きが必要になる。国境をまたぐ調達・供給網の断絶も考えられ、早期の見直しを迫られよう。 
 英政界では、強硬離脱の阻止に向けた動きが活発化している。最大野党の労働党は今月、新首相に再国民投票を迫る考えを表明した。国民投票やEU残留については、与党内の一部にも望む声があるという。
 保守党員の支持を集めた強硬姿勢だけでは、新首相もまた八方ふさがりに陥る可能性は否定できまい。幅広く国民の支持を得られる打開策を見いだす努力が必要だ。
カテゴリー: 社説


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