2019.07.23 08:40

Jの国からやってきた 高知Uイレブンの横顔特別編(2)MF松本翔

豊富な運動量で高知Uの中盤を支える松本翔。アスリートフードマイスターの資格をいかして、選手寮の食事作りも手伝う(春野運動公園)
豊富な運動量で高知Uの中盤を支える松本翔。アスリートフードマイスターの資格をいかして、選手寮の食事作りも手伝う(春野運動公園)
中盤の質 攻守に上げる
 チーム一小さな体で、ピッチのいたる所に顔を出す。絶妙のポジショニングで味方のパスを引き出し、守備時には危険なスペースをいち早く埋める。「サッカー人生を懸けて高知に来た」という松本翔(27)。中盤の質を、段飛ばしで上げている。

 J1横浜Mのユースからトップ昇格。それから5年の間に、レンタル先のJ2愛媛やJ3山口でもプレーした。おまけに早大卒で、アスリートフードマイスターなる資格も持つ料理男子。「しょうくんの欠点てなんだろう」とツイートしたのは、一つ後輩の新田己裕である。

 ただ本人は、人知れずコンプレックスを抱えていた。「高知に来るまで、シーズンを通して試合に出られたことがなかったんです」

 ユース時代は「ガンガンのドリブラー」で鳴らした。それがトップチームでは通用しない。中村俊輔、中沢佑二…。並み居るレジェンドたちに囲まれ、「ビビりにビビってた。ミスが怖くて…」。安全優先のプレーに終始しては、またスタッフに怒られる。悪循環だった。

 愛媛、山口でもスタメンには至らず。それどころか、2016年には次の移籍先が決まらない。地域リーグからのオファーは届いたが、「変なプライドがあった」。いずれはJのどこかに決まる―と思っている間に移籍市場は閉じて、公式戦に出る場を失った。

 以来、プライドは捨てた。苦しかった過去を話す時、苦い表情の割にすがすがしさを感じさせるのは、この時に何かが吹っ切れたからだろう。「点を決めてヒーローになりたい」と願った少年時代は過ぎたのだ。厳しいプロの世界でもまれるうち、「『あいつすげーうまい』じゃなくて、『何であいつがいつも使われるんだ?』って言われたいんですよねえ。黒子役というか」と考えるようになった。

 2017年は北信越リーグのサウルコス福井でプレー。「運動量」と「守備」という「ユース時代とは正反対のスタイル」を磨き、シーズン終盤に結果を出した。翌年はJ3鳥取へ。鳥取との契約は1年で終わったが、そこに高知ユナイテッドSCから声が掛かる。迷うことは、なかった。

 高知に来て半年。ほぼ全試合でスタメンを張る。プロになってから初の経験だ。「今季、松本翔っていうサッカー選手の存在を確立できるかも」。悪循環が、好循環に変わり始めた。

 高知Uが再び自分の可能性を感じさせてくれた。だから「このメンバーでJFLに上がりたい」。それには「切羽詰まった時に打開できる力を、一人一人が身につけること」。そこに導く黒子役に、自分がなる。 (井上真一)

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