2019.07.23 08:00

【参院選を終えて】「1強」の信任ではない

 年金問題や消費税増税、6年半に及ぶ第2次安倍政権の総括などが問われた第25回参院選は、与党の勝利で終わった。
 自民、公明の両与党は目標にした改選議席の過半数を獲得。非改選議席を含めた参院全体でも過半数を維持した。安倍首相は続投の支持を得たといってよい。11月には通算在職期間が歴代最長になる。
 とはいえ、選挙戦は盛り上がりに欠けた。選挙区の投票率が48・80%と過去2番目の低さだったことが象徴している。
 都道府県別の投票率も、高知を除く46都道府県で2016年参院選を下回った。高知も上昇したとはいえ微増だ。与党が積極的な支持を得たとは言い難い。
 改選数1の選挙区では立憲民主、国民民主、共産など5党派が野党統一候補を立てて臨んだ。徳島・高知選挙区は敗れたが、全国で10議席を獲得した。与党はこうした結果も謙虚に受け止めるべきだ。
 与党を支持した有権者も、「自民1強」や「安倍1強」の政治まで信任したわけではあるまい。
 6年半を振り返ると、自民党は数にものを言わせる政治を進めてきた。安保関連法など重要な法案ではたびたび採決を強行した。野党が求める予算委員会を開催しなかった先の通常国会の姿勢も、数のおごりというほかない。
 そんな国会運営は、世論調査などで自民党の支持者からも批判されてきた。参院選では自民党は議席を減らし、公明党は増やしている。これは自民党への批判と、公明党にブレーキ役を期待する声の高まりだとの見方がある。公明党の責任は重くなっていよう。
 自民党は今回、重点公約に憲法改正を挙げ、安倍首相は選挙戦でも、9条への自衛隊明記などを強く訴えた。選挙の結果、「改憲勢力」は参院の3分の2を割り込んだが、安倍首相は改憲に向けた動きを加速させる構えだ。
 憲法改正は、一時的な社会状況や政党の勢力関係の中で進める性質のものではない。改正の意義や理念を与野党が静かな環境でじっくりと審議していかなければならない。
 ところが、安倍首相は選挙戦で、改憲に慎重な野党を批判して挑発。野党は反発を強めてきた。現状は、とても丁寧な議論をする環境ではない。議論を始めるには、自民党が数の力で強行突破するような体質を改めることも必要だ。
 投票率の低下には野党にも責任がある。強力な野党が存在しない上、争点だった年金問題などでも、与党に力強く政策論争を挑む光景は見られなかった。比例代表で新しい党の「れいわ新選組」が2議席獲得したことは、既存の与野党への批判の表れであろう。
 解散がない参院には、衆院の暴走を抑止するとともに、多様な議論を展開する「良識の府」としての機能が期待されている。これからの参院にまさにその実践が問われる。
カテゴリー: 社説


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