2019.07.20 08:00

【京都アニメ放火】なぜ、これほどの被害が

 理不尽な凶行で何の罪もない多くの人々が犠牲になった。その被害の大きさに言葉を失う。
 アニメ制作会社「京都アニメーション」の京都市にあるスタジオで放火火災が起き、30人以上の犠牲者を出した。放火事件の犠牲者数としては平成以降、最悪の大惨事である。
 京都府警によると、身柄を確保した41歳の男がスタジオ1階に侵入してガソリンのような液体をバケツでまき、「死ね」と叫びながら火をつけたとみられるという。
 男は「小説を盗んだから放火した」と話したようだが、現時点では根拠があるのかどうか分からない。男もやけどを負って病院で治療中という。今後の対策のためにも詳しく動機を解明しなければならない。
 常軌を逸した凶行である。事前の想定や再発防止策にも難しい面はあるだろう。ただ、なぜ、これほど大きな被害になったのかは考える必要がある。
 まずガソリンの揮発性の高さ、危険性を再認識させられる。
 複数の専門家は、今回の火災は狭い空間内で「爆燃現象」が起きた可能性を指摘している。
 スタジオ内は床や壁に木材が使われ、大量の紙類なども置かれていたという。また1~3階をぶち抜くように、らせん階段が設置された構造だった。
 そこにガソリンがまかれて一気に充満。着火と同時に爆発的に燃え広がった。さらに窓ガラスが割れて新鮮な空気が流入。らせん階段が煙突の役割を果たし、より急速に燃え広がった―という分析だ。
 ガソリンを使った放火は過去にも大きな被害を出している。
 青森県で2001年に起きた消費者金融支店の放火事件では約3秒で火が燃え広がり、従業員5人が亡くなった。15年には東海道新幹線で男が焼身自殺。巻き込まれた女性1人が死亡、約30人が重軽傷を負った。
 今回は事件当日、似た男が現場近くのガソリンスタンドでガソリンを購入。20リットル入りの携行缶二つを台車に載せてスタジオに向かったとの情報がある。危険性を踏まえた管理態勢に一考の余地はないだろうか。
 スタジオは消火器や警報器も備えつけられており、消防法上の不備はなかったようだ。
 一方、3階と屋上に出る扉をつなぐ階段に犠牲者19人が集中。何らかの理由で扉を開けられず脱出できなかった可能性があるという。
 ガソリンの揮発性の高さから煙が充満するのも早かったとみられるが、人の命を守る上で構造上の問題はなかったのかどうか。詳しい分析を待ちたい。
 数々のヒット作で国内外のファンに支持される京都アニメーションの惨事は、日本のアニメ界にとって大きな損失である。何より、夢を持った多くの人生が突然絶たれた悲劇がいたたまれない。
 捜査当局による徹底した全容解明で、せめて今後に生かせるヒントを得なければならない。 

カテゴリー: 社説


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