2016.06.18 08:20

奇跡の笑顔 全盲・重複障害を生きる(20)災い転じて急成長

盲学校の後、音十愛ちゃんは放課後デイサービスで過ごす。「土佐希望の家」とともに在宅支援の両輪(高知市布師田の「幸のつどい」)
盲学校の後、音十愛ちゃんは放課後デイサービスで過ごす。「土佐希望の家」とともに在宅支援の両輪(高知市布師田の「幸のつどい」)
■親元離れ、自立の芽生え■
 2015年6月12日から母と離れて重症心身障害児者施設「土佐希望の家」(南国市)で暮らすことになった山崎音十愛ちゃん。絶体絶命―のはずだったが、思わぬ展開となった。

 「音十愛は劇的に変わったんです。自立したというか、社会性が身に付いたんです。まさか、こんな結果になるなんて!」。母、理恵さん(49)は声を弾ませた。

 当初は予想通り自傷が悪化。心配した母は毎夕、面会に出向いた。

 「帰ろうとすると泣いて泣いて。胸がちぎれるほど苦しかったですねえ。これなら行かない方がいいかなとなったんです。で、間を置いたらガラッと変わってきたんです!」

 音十愛ちゃんはたまに外泊許可をもらって帰宅した。すると、「なんかもう、帰るたびにどんどんお姉ちゃんになってるんですよ。自傷も減ったし、夜も寝だした。生活にリズムがついたみたいなんです。私が家事をしてるでしょ。お利口さんで待てるんですよ。以前なら自傷でガンガンたたいて、誰かが付きっきりだったのに」。

 ピンチがチャンスになっての大逆転。それを理恵さんはこう分析する。

 「職員さんと音十愛が、長期間一緒に過ごしたことで、お互いの信頼関係が生まれたんだと思うんです」

 病棟の全職員がローテ対応したことで皆が慣れ、特性をつかんだ。音十愛ちゃんも職員の名前や声を覚え、「○○さん?」と呼び掛ける。歌も歌ってコミュニケーションが取りやすいので結構人気者になった。ただし、職員も入所者のケアで忙しいためずっと相手はできない。音十愛ちゃんは徐々に「待つ」ことを覚えたのだ。

 「障害のある子は変化に対応しにくいんです。たまにショートステイ(SS)で預けられても、子供もパニックだし、職員さんも困る。で、何とか一晩か二晩過ごして帰っても、次回はまた新しい職員さん。お互いに一からやり直しなんです。音十愛もその繰り返しだった。今回、私が寝込んだことですごい発見があったんです」

 付け加えると、睡眠が安定した背景には睡眠導入剤の増量がある。希望の家側が要請し、医師も了解した。母は朝の寝覚めが悪くなるのではと心配したが、結果は「吉」と出た。

 ロングステイ中に母は回復。仕事に復帰した。そして、ありがたかったのは、中学2年の姉の相手を、初めて存分にできたことだという。「学校から帰ってくるでしょ。あふれるごとく話してくれるんです。ずっと遠慮してたんでしょうねえ」

 希望の家の生活は84日間。9月から元の生活に戻った。ただ、支援者会議でサービス調整した結果、ショートステイの日数を増やし、放課後デイサービスの「幸のつどい」も、午後7時までケアを延長してくれた。

 どん底での親離れが、思わぬ成長を引き出した音十愛ちゃん。帰宅の際の母の出迎えに、両手をブルブル振るわせ、「ママッ!」と喜びを爆発させる。

 「それがいい笑顔なんです。なんであんな笑顔ができるんでしょうかねえ。うふふ」

 母は絶望の淵から「奇跡の笑顔」を手に入れた。
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