2019.07.15 08:00

【2019参院選 外交・安保】本当に成果があったのか

 6年半余りで訪問した国・地域は80、飛行距離は地球37・19周分―。首相官邸のホームページには安倍首相の外遊の記録が載っている。
 「積極的平和主義」「地球儀を俯瞰(ふかん)する」―首相が強調する外交方針と成果をアピールするためだ。
 多くの国・地域を訪ね、さまざまな首脳らと会談する。そのことは日本の考えや方針を伝える上で意味は小さくない。だが、外遊に釣り合うほど目に見えた成果があったかとなると首をかしげざるを得ない。
 安倍政権が外交・安保政策の基軸とする米国との関係でも明らかだ。トランプ米大統領と何度も会談し、電話でも頻繁にやりとりする仲だ。
 にもかかわらず、貿易交渉ではトランプ氏の「ディール(取引)」の前に姿がかすむ。20カ国・地域首脳会議(G20サミット)の前、日米安全保障条約は片務的だとトランプ氏が不満を漏らしたが、真意をたださなかった。
 主張すべきことは互いに主張して妥協点を探る。それこそが真の同盟関係だが、そうした姿勢は安倍首相には乏しいのではないか。
 ロシアのプーチン大統領とも頻繁に接触してきたものの、北方領土問題の先行きは不透明だ。プーチン氏から日米同盟がネックで早期解決は難しいとの認識が示された。
 日米関係は承知の上だからプーチン氏の外交戦術だろう。長年の両者の関係は何だったのか。しかも首相は2島決着案を持ち出している。4島返還方針を転換するなら、きちんと国民に説明すべきだ。
 日本人拉致問題を抱える北朝鮮との交渉も同じだ。首相は無条件で首脳会談を求める考えを示したが、それまでは拉致問題の進展が会談の「前提条件」だった。なぜ方針変更なのか、これも説明がない。
 沖縄・尖閣諸島の国有化で冷え込んでいた日中関係は一定の明るさが見えてきた。首相が昨年、約7年ぶりに中国を公式訪問し、習近平国家主席もG20サミットで来日した。
 関係修復はむろん歓迎したい。だが、米中貿易摩擦で米国をけん制したい中国が日本に「接近」しているという事情もある。そうした事情も踏まえて修復を本物にしたい。
 日米安保では沖縄の思いが気掛かりだ。米軍普天間飛行場の辺野古移設では県民投票で7割以上が埋め立てに反対したのに政府は工事を進めている。トランプ氏は安保条約を片務的と言うが、沖縄は米軍基地負担を強いられ続けている。トランプ氏にそれも説明せずに基地問題で「寄り添う」と首相が繰り返してもむなしく響くのではないか。
 混迷が深まったとはいえ、米イラン間を仲介するなど首相の外交姿勢は否定しない。ただ、地上配備型迎撃システム「イージス・アショア」の秋田、山口両県への配備でも地域の反発を招いている。「積極的平和主義」を唱えるなら、まずは身近な国民の声に寄り添わねばならない。

カテゴリー: 社説


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