2019.07.13 08:00

【2019参院選 憲法改正】審議できる環境なのか

 今回の参院選は、今後の憲法改正論議を左右する選挙になる。
 自民党は重点公約の一つに改憲を挙げ、早期実現を目指す姿勢を明確にした。9条への自衛隊明記▽緊急事態対応▽参院選の合区解消▽教育充実―の党改憲案4項目を条文イメージとして明示している。
 改憲を宿願とする党総裁の安倍首相が掲げる2020年の実現目標こそ示していないものの、首相は選挙戦でも「自衛隊の違憲論争に終止符を打つ」と意気込む。
 自民、公明両党、日本維新の会などの「改憲勢力」が、国会発議に必要な3分の2以上の議席を維持すれば、首相は早期発議を目指して改憲論議の主導を強める腹づもりであることは間違いない。
 ただ、国の基本法である憲法の内容を定める行為は、その時々の社会状況や政党の勢力関係を超えた普遍的な理念に裏打ちされる必要がある。今の国会が与野党協調の下、静かな環境でそんな審議ができるのかは疑問がある。
 今年の通常国会でも衆参両院の憲法審査会の審議は停滞した。
 野党は、首相が唐突に9条への自衛隊明記案を打ち出して以降、安全保障関連法で拡大した自衛隊の活動範囲がさらに広がると懸念。態度を硬化させてきた。
 加えて、首相側近の下村博文・自民党憲法改正推進本部長が昨秋、野党は憲法論議に消極的だとして「職場放棄」と発言。野党が猛反発し、与野党協調はなお遠くなった。
 今回の選挙戦でも、首相は改憲について「議論する政党を選ぶのか、審議を全くしない政党を選ぶのか」と野党を挑発している。本来あるべき憲法論議の環境を破壊しているのは、首相自身ではないのか。
 改憲に関する温度差は、安倍自民党と国民の間にも感じられる。
 共同通信による今春の世論調査では、改憲に関心があるという回答が「ある程度」を含め7割を超えた。一方、20年の改正憲法施行には反対が58%と賛成を20ポイント近く上回った。議論は深めるべきだが、拙速な改憲には懐疑的な民意と受け取れる。
 本紙などが5月に行った徳島、高知両県の世論調査では、最も関心がある課題に「憲法改正」を挙げた人は8・2%。社会保障や景気・雇用対策などを下回って5番目だった。有権者が差し迫った課題とは捉えていないことがうかがえる。
 憲法改正は国民が納得できる十分な議論がないまま、一政権が強行していい性質のものではあるまい。
 参院選の公約で連立与党の公明党は、9条改正は「慎重に議論」と自民党と立場を異にする。立憲民主党や国民民主党は9条改正に反対し、衆院解散権の制約などに言及する。日本維新の会は教育無償化などに触れ、共産党や社民党は改憲への反対を明確にする。
 改憲論議が今後どう進むのかは、有権者の判断が決める。    
カテゴリー: 社説


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