2019.07.12 08:00

【2019参院選 アベノミクス】看板倒れになってないか

 第2次安倍政権は間もなく発足から6年7カ月になる。それはそのまま経済政策アベノミクスの歩みでもある。安倍政治は実質アベノミクスとともに始まったからだ。
 名称は浸透したといってよい。問題は、どれだけ国民がその成果を実感できているかであろう。
 自民党は参院選公約の中で、アベノミクス6年の実績として、有効求人倍率が史上初めて全都道府県で1倍を超えたことや、若者の過去最高水準の就職内定率などを例示。景気回復を強くアピールしている。
 経済データの中には確かに大きく改善したものがある。だが、政権が掲げた実質経済成長率の目標2%はいまだ達成できていない。
 消費の伸び悩みが大きな要因だ。多くの国民が景気回復を実感できておらず、将来への不安を募らせている証しといえるだろう。
 このまま、いまのアベノミクスを続けてよいのか。世界経済の行方も混沌(こんとん)とする中、検証と判断が求められる。
 アベノミクスは金融緩和、財政出動、成長戦略の「三本の矢」を柱に始まった。日銀も歩調を合わせ、大規模な金融緩和や市場への資金供給を続けている。
 これが円安を誘導し、企業業績や株価を押し上げたのは事実だろう。しかし、金融緩和などはいわば市場へのカンフル注射だ。常態化すれば異変が生じる。
 金融機関は超低金利によって業績が悪化し、日銀は大量の国債や上場投資信託(ETF)の購入で市場をゆがめかねない状況にある。一方で政府は借金の金利が下がったことで積極財政を続けている。
 実質経済成長率はこの6年、平均1・2%程度で、2%には程遠い。日銀が目標にする同じく2%の物価上昇目標も、当初は2年程度で達成するとしていたが実現せず、たびたび延期した揚げ句、明示をやめてしまった。
 政権は大企業や富裕層が潤えば、それが地方や中小企業に行き渡る「トリクルダウン」も盛んに主張したが、結局、恩恵は波及せず、最近は主張も耳にしなくなった。
 2015年には「新三本の矢」として「強い経済」「子育て支援」「安心につながる社会保障」を打ち出した。これが新たな看板政策「1億総活躍社会」につながった。
 看板は次々に登場するが、どれも成果が十分に見えてこないのが現状だ。「やっている感」の演出や看板倒れに終わっていないだろうか。
 アベノミクスの成果とする高水準の有効求人倍率をとっても、人口減少や過疎化が数値を押し上げていると指摘する声は多い。
 カンフル注射だけで経済の足腰は強くならない。人材育成や規制緩和といった地道な政策や新たな視点が必要なはずだ。米中貿易摩擦などで景況感が厳しくなればなおさら経済政策の質が問われる。
カテゴリー: 社説


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