2019.07.06 08:00

【対韓国輸出規制】「自由貿易の旗手」が泣く

 「自由貿易の旗手」を自任する、日本にふさわしいやり方とは思えない。
 政府は半導体などの製造に必要な材料3品目について、韓国に対する輸出規制を強化した。
 元徴用工問題を巡り韓国から満足のいく対策が示されなかったことが引き金となっており、事実上の対抗措置と言える。しかし、政治的対立の解決のために通商政策を用いるのは適切ではない。
 日韓関係を一層悪化させる強硬手段ではなく、対話で打開を図るよう求める。
 3品目は半導体の洗浄に使う「フッ化水素」など。輸出企業はこれまで一定期間分を一括申請すればよかったが、今後は個別の取引ごとに審査し輸出の可否を判断する。韓国半導体大手のサムスン電子などに大きな打撃となる。
 理由について政府は韓国との信頼関係が損なわれたこと、3品目は軍事転用される恐れもあるため安全保障上の輸出管理が必要になったことを挙げる。確かに日韓の間には、日本企業に元徴用工への賠償を命じた韓国の最高裁判決に加え、従軍慰安婦問題や自衛隊機への火器管制レーダー照射問題などが横たわる。
 元徴用工問題は過去に韓国も日韓請求権協定で解決済みとしていた。韓国は日本が提案した仲裁委員の任命にも応じていない。韓国側の対応に問題はあるが、だからといって貿易を絡めるのは筋が通らない。
 日本はトランプ米政権が自国の安全保障を理由に、鉄鋼やアルミニウムの輸入を制限した際には、自由貿易を重視する立場から反対した。その姿勢と矛盾していると言われても仕方ない。
 日本が議長国となり大阪で開かれた20カ国・地域首脳会議(G20サミット)でも、「自由で公平、無差別な貿易」の実現を目指すとの首脳宣言を採択したばかりだ。それとの整合性も問われよう。
 安全保障を目的とした輸出管理は世界貿易機関(WTO)も認めてはいるが、無条件にではない。現にトランプ米政権のやり方に関しては、過度な安保重視は貿易戦争を招くと警鐘を鳴らしている。
 北朝鮮への対応一つを取っても現在、韓国との連携の重要性は増す一方である。安全保障を言うのなら、韓国との友好関係を損なうことの方がよほど、安保面でのマイナスとなろう。
 日本は3品目以外にも輸出規制を拡大することを検討。韓国はWTOへの提訴も辞さない構えだ。対立がエスカレートすれば、打撃を受けるのは韓国側だけではない。韓国企業と取引する日本企業にも跳ね返ってこよう。世界市場への韓国製品の供給が滞れば、批判の矛先が日本へ向けられる恐れもあるだろう。
 制裁関税や禁輸措置を使って2国間の交渉を優位に行う。そんな「トランプ流」に追随してはならない。冷静に、粘り強く、打開の糸口を見いだす努力を続けてもらいたい。
カテゴリー: 社説


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