2019.07.01 08:00

【米朝再々会談】具体的な成果上げねば

 歴史的な意義に見合うよう、行き詰まった非核化交渉をどう進展させ、具体的な成果を上げるのか。これからが肝心だ。
 休戦状態にある朝鮮戦争(1950~53年)以来、現職の米大統領として初めて、トランプ氏が南北軍事境界線がある板門店(パンムンジョム)で北朝鮮側に足を踏み入れた。金正恩(キムジョンウン)・朝鮮労働党委員長と3回目の会談をし、トランプ氏は非核化の米朝実務協議を近く再開すると明らかにした。
 板門店の軍事境界線を両氏が互いに行き来して握手を交わす―。朝鮮戦争から70年近く経過する中、歴史的な出来事に違いない。
 だが、いつまでにどんな交渉を進めるのか。ほとんど明らかになっていない。これまで2回の会談を見ると、交渉が前進するか心配する。
 トランプ氏と金氏は昨年6月、シンガポールで初の首脳会談を行った。「新たな米朝関係樹立」「朝鮮半島の平和体制構築」「朝鮮半島の完全非核化」などを共同声明に盛り込んだものの、それらを具体化する交渉は難航した。
 両氏は今年2月、ベトナムで再会談。寧辺(ニョンビョン)の核施設廃棄と引き換えに北朝鮮側は経済制裁の解除を求めたが、米側は非核化措置が十分でないとして決裂した。北朝鮮はその後、短距離弾道ミサイルを日本海に発射するなど緊張が高まっていた。
 大阪での20カ国・地域首脳会議(G20サミット)直後の電撃的ともいえる今回の会談は、トランプ氏のツイッターでの呼び掛けがきっかけだ。状況を打破したかったのだろうが、来年の大統領選前に外交成果を狙ったとみる向きもある。トランプ氏らしいといえばそれまでだ。パフォーマンスを先行したとすれば問題解決の「本気度」を疑う。
 気になるのは、短距離弾道ミサイル発射を問題視しない考えをトランプ氏が改めて示したことだ。日本は国連安全保障理事会の決議違反だとして発射を批判している。米本土を直接脅かさないとの理由で問題視しないとすれば、北朝鮮に誤ったメッセージを再度送ることになる。
 トランプ氏は会談後、対北朝鮮制裁を「維持する」とした一方で、交渉次第では制裁を見直す可能性も示した。金氏の側にも交渉再開を制裁緩和のきっかけにしたい思惑があるとの指摘がある。
 どんな交渉になるか分からない。ただ、国際社会が結束して北朝鮮に求めた要求を勝手に緩めるようなことがあってはならない。
 板門店には韓国の文在寅(ムンジェイン)大統領も同行した。南北対話を優先し、米朝間の「仲介役」を自任してきたが、交渉決裂後は南北関係は冷え込んでいた。仲介役としての存在感も薄れていただけに協議を前進さすよう後押しを求めたい。
 日本もむろん積極的にかかわりたい。安倍首相は前提条件を付けずに日朝首脳会談を求める方針を示したが、対話は実現していない。「蚊帳の外」に置かれては、日本人拉致問題の解決など見通せない。
カテゴリー: 社説


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