2019.06.28 08:00

【G20開幕】国際協調へ存在意義を

 日米欧の先進7カ国や中国など新興国による20カ国・地域首脳会議(G20サミット)が大阪市できょう開幕し、2日間の討議に入る。
 米中貿易摩擦の収束が見通せないこの時期に、自由貿易の推進姿勢をどこまで強く打ち出せるのか。初めて議長国を務める日本は、安倍首相の調整力が問われる。
 二大国の対立は深刻の度を増している。昨年12月の首脳会談以降、貿易収支の不均衡の改善や産業補助金の見直しなどの合意文書策定に着手してきたが、交渉は今年5月に頓挫。高関税の応酬が続いている。
 トランプ米大統領は、制裁関税の対象をほぼ全ての中国製品に広げる「第4弾」に踏み切る構えを見せている。中国も報復関税に加え、レアアース(希土類)の対米輸出規制をちらつかせている。
 G20サミット期間中には、約7カ月ぶりに米中首脳が会談する見通しだが、米政権内にも劇的な進展は見込めないという見方が強い。
 世界経済の先行きには不安が広がる一方だ。国際通貨基金(IMF)は、米中の関税合戦が一段と拡大すれば、2020年の世界全体の国内総生産(GDP)が0・5%減少すると試算している。
 ラガルド専務理事は「貿易戦争は誰しもが苦しむだけで、勝者はいない」とする。的を射た警告だろう。
 G20は、世界経済をリーマン・ショックが襲った08年に首脳の会合も始まった。しかし、米国第一を掲げて多国間の枠組みを否定し、同盟国にも貿易紛争を仕掛けるトランプ米政権の登場で、多国間の協調は大きく後退した。
 トランプ氏の意向で、昨年12月の首脳宣言では長く掲げてきた「反保護主義」の文言が消滅した。世界経済の秩序を維持する存在意義が問われる事態になっている。
 今月の財務相・中央銀行総裁会議は声明で、世界経済の成長持続に向けて、各国が財政・金融、構造改革の政策手段を総動員することを再確認した。ただ、摩擦の背景にある保護主義の台頭に対し、確固たる姿勢を示すことはできていない。
 反保護主義の堅持と米中摩擦の解消へ、トランプ氏が入る討議で本質的な議論に持ち込む必要があるだろう。トランプ氏との「蜜月」を誇示してきた安倍首相が果たす役割が問われる。
 米国に国際協調を説く必要があるのは、温暖化対策も同様だ。首脳宣言の原案には、昨年は盛り込まれたパリ協定の完全実施といった強い表現はないという。協定離脱を表明した米国への配慮がにじみ、内容が後退したとの批判も予想される。
 自国第一主義が強まる潮流は米国だけに限らない。財務相会議では途上国へのインフラ投資で、財政の持続可能性を保つ新原則で合意している。途上国の返済能力を超えた中国による「借金漬け外交」を念頭に置いた内容だ。
 国際秩序と協調の前進へ、G20の存在意義を示すよう求めたい。
カテゴリー: 社説

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