2016.02.13 15:03

高知大学地域協働学部1期生が仁淀川町長者地区で実習 

地区の将来やボランティア組織「だんだんくらぶ」について、地域住民に聞き取りを行う高知大地域協働学部の学生ら(高知県吾川郡仁淀川町長者)
地区の将来やボランティア組織「だんだんくらぶ」について、地域住民に聞き取りを行う高知大地域協働学部の学生ら(高知県吾川郡仁淀川町長者)
照らしたい棚田の風景
 高知県吾川郡仁淀川町長者地区には、12人の高知大学の地域協働学部1期生が地域理解実習に訪れた。2015年の国勢調査(速報値)で、人口減少率が高知県内3番目に高かった仁淀川町の中でも、長者地区は最奥部に位置し、過疎化のスピードが著しい。厳しい状況の中でも、必死に活性化策を探る地元ボランティアとともに、山里を明るく照らす活動を追い求めることが、学生たちのテーマになった。

キャンドルナイトでつきたての餅をもらう学生ら。イベントでは地域住民と触れ合う時間が長くなる(高知県吾川郡仁淀川町長者)
キャンドルナイトでつきたての餅をもらう学生ら。イベントでは地域住民と触れ合う時間が長くなる(高知県吾川郡仁淀川町長者)
 地区のシンボルは、山里に広がる見事な棚田。ここで活動するボランティア組織「だんだんくらぶ」は、棚田の草引きなどをするため、2003年に設立された。「棚田が荒れていると、地域もすさんでいるように見えるから整備を始めた」と会長の西森勇幸さん(68)は振り返る。

 その棚田の美しさに魅了された高知大生が、長者地区を訪れるようになったのは2007年から。代替わりしながらも、学生が地域のイベントに手助けに入るなどの関係性が続いている。

 「大学関係者からは『地域協働の発祥の地だ』と言ってもらってます」と、西森さんは自負する。

 若者と手を携えることには、一日の長がある。しかしながら、地区の少子高齢化率は着実に進み、地域の抱える問題点はますます大きくなっている。

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 地域理解実習を進める1年生が取り組むことになったのは、そんな閉塞(へいそく)感を打破する“新たな一手”を探ることだった。

 学生は地域で起こっていることを知るため、だんだんくらぶの活動をテーマに関係者から聞き取り調査を行った。そこからは、厳しい現実が浮き彫りになった。

 町外を含めれば、90人近いメンバーがだんだんくらぶに所属しているが、実際に活動しているのは20人ほどに固定化されている。役割分担がうまくできず個人の負担が重くなっていること、メンバー不足でイベントの準備会合があまり開けず、マンネリ化していることなどが指摘された。

 活動拠点にしている集落活動センター「だんだんの里」でも、農家レストランの売れ行きは上向かず、明るい兆しは見えない。地区に関わる活動に効果的な打開策はなかなか見当たらず、「だんだんの里」の運営責任者を務める大野孝美さん(60)は「私たちにとっても、大学生にとっても、長者地区の活性化は相当難しいテーマ」と顔を曇らせる。

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 実習で話し合いの進行役を任された近藤日向子さん=愛媛県出身=も、「何をやるにしても『無理やろう』という気分はあると思う」と現実の厳しさを痛感している。

 それでも、学生たちは前を向いて新しいアイデアを出そうと試みている。

 地域での最終報告では、さまざまな年代の人が集える運動会や、地域の人たちが作った農産物を持ち寄るご飯会などを提案。誘い合う機運を醸成することで、協力の輪の拡大を図ろうと模索する。「地域の小学生との関わりを増やし、その保護者にも活動に参加してもらう」など、アイデアが多く出た。

 活性化を真剣に探るために、自分たちと地域の人の関係性を変えていきたいと考える学生もいる。

 2015年秋の現地実習では、棚田の整備も行う予定だった。しかし、学生たちが到着した時、住民は草引きをほとんど済ませ、残った仕事は集められた草を燃やすだけ。本腰の作業をする気持ちで訪れた学生の中には「少し、拍子抜けだった」と残念がるメンバーも多かった。

 こんな経験から、最終報告には「棚田の草引きは重労働なので、学生が主体的に行って、地域の人たちがそこに加わってもらうようにする」という内容も盛り込まれた。
 近藤さんは「協働するためには、お互いが一歩引く間柄になってはいけない」と考えている。大野さんも「当事者意識のある若い学生の視点があれば、変化は起きるかも」と期待する。

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 厳しい条件の中でも、力を合わせれば成果が得られることも体験した。

 2015年11月、棚田に約2千本のろうそくを並べる「キャンドルナイト」の日。午後から雨が降りだすあいにくの天気だった。ずぶぬれになりながらも、学生たちは住民や子どもたちと一緒に火をともし続けた。最後は、温かな光が山里を照らした。

 近藤さんが実習地として長者地区を選んだのは、棚田の美しさに加えて、「高齢者と子どもが一緒にいて、直感的に人の優しさに触れられた。私たち学生が地区に入ることも、素直に喜んでくれた」からだと語る。

 人に温かな地で、希望の明かりをともす活動を春以降も模索する。

 「長者の新しい魅力を見つけ、発信する方法を考えたい」。近藤さんは、そう力を込めた。


温かい人たちに返礼を  武田那美さん
 仁淀川町長者地区に入って、「だんだんくらぶ」の方のお話を伺っている中で、特に印象的だったことがあります。
 それは「長者の魅力は人の温かさだ」とおっしゃっていたことです。私は、地域の魅力を聞かれて最初に出てくる言葉が「人の温かさ」であるということにとても驚きました。
 私の中の「地域の魅力」のイメージは今まで、観光資源や公共交通機関が整っているなどの物的なものでした。しかし、長者地域に入ってからはそのイメージが覆されました。
 実際に地域の人と関わっていると、長者の魅力である「人の温かさ」をとても感じます。私たちのような、学生でまだまだ未熟な者の意見を受け入れてくれること、私たちの名前と顔を覚える努力をしてくださること。挙げていくときりがありませんが、とても温かく受け入れてくださいます。
 今、感謝の気持ちでいっぱいです。この感謝の気持ちを、これからの取り組みで返していきたいと思っています。


失われる活気の要因探る  永野豪人さん
 私の将来の目標は、高知県知事になることです。後期の実習では、その目標に関連する学びがたくさんあったと思います。
 印象的だったのは、活動の活気が失われつつあることでした。ヒアリングをするうちに住民から「活動がきつくなってきた」「どうすればいいか分からない」などの言葉が漏れることがありました。
 なぜ、消極的になったのか。私は「集落活動センターの仕組み」に問題があると考えました。
 センターは、住民が主体となって地域のさまざまな課題を解決したり、自主防災などの仕組みをつくったりするための活動拠点です。うまく機能すれば地域に良い影響を与えられますが、活動する人々には責任も重くのしかかるのです。それらの責任や、活動がうまくいかないことなど、多くの要因があると考えました。
 これらの実態を見て、行政は団体の活動を活発化させるファシリテーター(進行役)としての役割を持つことが必要であると考えました。地域協働学部での学びは、広い範囲の中の小さなものを見る力を養っていると感じます。

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カテゴリー: 教育大学特集高吾北教育


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