2019.06.25 08:00

【米国とイラン】よぎるイラク戦争の過ち

 米国とイランの対立がきなくさくなってきた。
 双方は武力衝突もいとわない姿勢で互いを挑発。イランは米国の無人偵察機を撃ち落とし、米国はイランにサイバー攻撃を仕掛けるなどエスカレートしている。
 このままでは本当に戦争に陥りかねない。まずは両国が冷静になり、挑発をやめることだ。その上で外交努力を続けるよう求める。平和的解決に向け、国連や20カ国・地域首脳会議(G20サミット)などでも議論したい。
 そもそも米国にイランを攻撃する大義名分はあるのだろうか。
 両国はイランの核開発問題などを巡って長年対立してきたが、2015年、イランが核開発を制限して、欧米などが経済制裁を解除する合意が6カ国と結ばれた。
 ところが昨年、トランプ大統領は合意から一方的に離脱した。イラン原油の禁輸など制裁も再び発動し、現在の緊張関係の原因をつくったことは否めない。
 間に入って歩み寄りを促すことが期待された安倍首相のイラン訪問も事態の改善につながらなかった。訪問中にイラン沖で日本などのタンカー2隻が攻撃を受けた。
 米国はすぐさまイランの行為だと断定。海上でタンカーから不発弾を回収しているとする集団の映像を公開したが、攻撃とイランの関係を示す確たる証拠とまでは言い難いのが現状だ。
 2003年に始まったイラク戦争が頭をよぎる。
 イラクのフセイン政権の「大量破壊兵器の保有」を理由に、当時のブッシュ米政権が英国などと「有志連合」を結成して攻め込んだ。
 フランスやドイツなどが反対し、国連決議もない中での武力行使だった。日本も開戦を支持し、陸上自衛隊が南部サマワで給水や道路補修などを担当した。
 フセイン政権は崩壊したが、結局大量破壊兵器は見つからず、後に誤った情報だったことが判明した。十分な証拠や論議もなく、米国の方針が正義であるかのように攻撃を許した。イラク戦争の大きな過ちであり教訓だ。米国や同盟国は同じ過ちを繰り返してはならない。
 イラン側にも問題はある。米国に反発し、低濃縮ウランの貯蔵量を増やしており、間もなく6カ国との核合意で定められた上限量を超える見込みだ。イラン革命防衛隊は米国の無人偵察機を撃墜した。
 これではトランプ政権を刺激するばかりだ。実際、米国はイランへの武力報復を計画し、トランプ氏が攻撃10分前に中止したことを明らかにしている。
 トランプ氏はイランへの追加制裁を表明した。緊張は依然、予断を許さない状況にある。国際社会で双方に自制を呼び掛けていきたい。
 日本はイランとも良好な関係にある。安倍首相のイラン訪問は成果がなかったが、日本が果たすことができる役割は引き続き大きい。
カテゴリー: 社説


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