2019.06.20 08:00

【党首討論】主張を述べ合うだけでは

 参院選前にさまざまな懸案や課題があり、党首討論で国民はそれぞれについて政府与党の方針や考え方を聞きたかったはずだ。
 安倍首相はそうした問題を丁寧に説明し、野党は詳しく問いただす。それぞれに課せられた国民への義務のはずだ。しかも党首討論は1年ぶりだ。
 しかし、多くの国民はきのうの討論に失望したのではないか。
 「100年安心」と政府が繰り返し説明している年金制度の将来像について安倍首相の話を聞いて本当に国民は安心できただろうか。野党側もそれぞれの主張を延々と述べ、聞いていても非常に分かりにくかった。
 野党が求めた衆参両院の予算委員会集中審議を自民が拒否し、党首討論に―。久々に開かれた経緯にはそんな事情もあったようだ。だが、それは与野党の思惑や駆け引きの結果で国民には何ら関係ない。
 国会会期末が26日に迫っている。老後資金の問題や「イージス・アショア」を巡る防衛省のミスなど、国民が知りたいことへの政府の説明は十分とはいえない。
 委員会審議で国民の疑問に政府は答えるとともに、野党も核心をつくような質問をぶつけてほしい。
 きのうの党首討論では疑問点がいくつかある。
 老後資金問題で審議会の報告書を麻生金融担当相が受け取り拒否した理由を聞かれた安倍首相は、「大きな誤解が生じた。違和感を感じた人もいる」とした。
 しかし、報告書に盛り込まれた「月5万円の赤字となり、30年で2千万円が必要」とする試算の根拠は、厚生労働省が示した資料だったはずだ。
 年金生活者の実態はさまざまだから、という理由も安倍首相は挙げていたが、国のデータを基にした報告書で、国民がどんな「誤解」をしたというのか。理由を詳しく説明してほしかった。
 少子高齢化の中、年金制度の持続性に国民は疑問を持っている。赤字が「月5万円以上」になるかもしれない。そんな心配をしている国民も少なくない。
 「誤解」といった言葉で切り捨てていては国民の懸念は解消しない。「都合の悪いことを隠蔽(いんぺい)する政権の態度が国民に不安を与える」という野党側の指摘は重い。
 老後資金問題や「イージス・アショア」問題に加えて日米貿易交渉、日朝関係…。国民が関心を持っている課題は多い。
 それなのに、党首討論の時間はなぜこれほど短いのだろう。野党側と安倍首相のやりとりは1時間もなかった。これで腰を据えた論議ができるはずがない。討論が「尻切れとんぼ」になっては、国民の理解は進まない。じっくり議論できる仕組みに変えるべきだ。
 回数については5年前、月1回実施で与野党は合意したはずだ。その頻度で開催できなくても、1年ぶりというのは休憩時間が長すぎる。
カテゴリー: 社説

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