2019.06.16 08:26
続・灰まで焼け 高知県大3万8000冊処分のその後(6)レファレンス本焼くとは
高知県立大の大量焼却を図書館学の専門家はどう見ているのだろうか。都立図書館司書や大学図書館長などを歴任し、国や各地の自治体に求められて提言を長年続けている昭和女子大名誉教授の大串夏身さん(71)=東京都=に聞いた。
都内のインタビューは雨の日だった。カフェで向き合い、大串さんが言う。「たぶん大学に図書館のことが視野になかった。どれぐらいの本を所蔵し、そのためのキャパをどう確保し、将来どうするのかという…。恐らくまず新しい建物の設計が先にあり、図書館員やちゃんと分かってる人の意見が具体的に反映されなかったんだろうなあ、と思った」
■
焼却された本の中には、大串さんの著作「江戸・東京学研究文献案内」(1991年)がある。
大串さんは、東大の吉見俊哉教授や佐藤健二教授、平井聖(きよし)元昭和女子大学長らの名前を挙げ、「サロンみたいな勉強会を15年ぐらい続けたかな。小木新造先生(文化史学者)を中心に『江戸東京学辞典』(87年)を作ったのが最初。それからみんなそれぞれの成果を本にしていった。それが何冊も(県大に)収蔵されてる」と言う。大串さんが、勉強会から生まれた著作を紹介したのが「―研究文献案内」だった。つまり県大が所蔵する江戸東京学コレクションの案内役を務めるレファレンスブック(参考書)に当たる。「コレクションは全体がつながっている。それなのに焼いちゃったんだね」…