2019.06.15 08:05

【首相イラン訪問】粘り強く仲介の役割を

 緊張緩和に向けて真の仲介者の役割を果たすよう安倍首相、日本政府の粘り強い努力を求めたい。
 首相が核問題を巡って米国と激しく対立するイランを訪問し、ロウハニ大統領、最高指導者ハメネイ師と相次いで会談した。
 偶発的な軍事衝突を避けるよう求めた首相に対し、イラン側はトランプ米政権による原油禁輸制裁の停止を特に求めた。また米国は誠実に対話する用意があるとの説明を、ハメネイ師は「(米国の)発言は信用できない」と一蹴した。
 両国の対話、緊張緩和は容易な道のりではあるまい。双方との良好な関係を生かし、中東の安定に貢献できるのか。仲介外交の真価はこれから問われそうだ。
 トランプ政権が昨年、欧米など6カ国とイランが結んだ核合意から一方的に離脱して以降、両国の対立は先鋭化している。
 オバマ前政権の政治的遺産とされる核合意からの離脱は、前政権の功績を否定し、イランと対立するイスラエルを支持する国内基盤にアピールする狙いがある。自国第一主義で国際協調を顧みないトランプ米大統領の身勝手さが際立つ。
 核活動や弾道ミサイル開発の中止などを要求する米国はその後、立て続けの制裁発動でイラン経済を締め付けてきた。
 ことし4月以降もイラン革命防衛隊のテロ組織指定や、同国産原油の全面禁輸措置で最大限の圧力をかけている。さらに中東の駐留米軍などが攻撃される恐れがあるとし、空母や爆撃機をイラン近海に派遣した。
 経済に加えて軍事的な脅しを行使すれば、緊張はいやが上にも高まろう。イラン国内でも反米保守強硬派の力が増し、国際協調路線のロウハニ政権への不満がたまっている。
 首相の訪問中にもイラン沖のホルムズ海峡近くで、日本の海運会社などが運航するタンカー2隻が攻撃を受けた。何者が攻撃したのかは不明にせよ、中東情勢の一層の混迷と不安定化を物語る。
 ただ、米国、イランとも軍事衝突は望んでおらず、危機回避の道を探っているのは事実だろう。
 首相の訪問は、4月の訪米時にトランプ氏に要請されたという。制裁で苦しむイラン側も、穏健派のザリフ外相が5月に急きょ来日した。トランプ氏との親密な関係をアピールする首相に危機制御の戦略的役割を期待したためとされる。
 当面は、イラン側が求めた原油禁輸制裁の停止に米国がどう反応するかが焦点になろう。
 首相は今月末、20カ国・地域(G20)首脳会議で来日するトランプ氏と対処方針を協議したい考えだ。今回の危機は全てトランプ氏の事起こしである。イラン側の意向を伝えるだけでなく、対話に向けて説得に乗り出す姿勢が求められる。
 自らアピールするトランプ氏との「蜜月関係」を、対米従属ではなく国際協調の道に生かしてこそ外交成果といえる。
カテゴリー: 社説


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