2019.06.08 13:00
土佐清水市の染色芸術家 小高良作さんがいの町で個展
自らすいた和紙を独自の手法で染色する土佐清水市在住の芸術家、小高良作さん(47)の個展「Roots-根-」が、吾川郡いの町の紙の博物館で開かれている。
大阪府高石市出身で、2001年から土佐清水市上野を拠点に創作活動を続けており、近年は欧州や山口県立萩美術館など国内外で作品を発表している。
小高さんの染色法は、トルコの伝統的な染色法「エブル」が原点で、25歳の時に出合い、現地で習得した。エブルは「キチュレ」という植物の根から取った樹液を水で溶かし、その液体の表面に染料を浮かべて、筆などで模様を描く技法。
染料や液体の濃度などの研究を独自に重ね、エブルのように描くのではなく、気温や湿度などを見極め、染料が生き物のように刻々と姿を変える瞬間を和紙に移し取るオリジナルの手法で制作している。
紙の博物館からの依頼を受けた今回の個展は、日本人にとって身近な和紙と、自身の初個展から20年目の節目ということから、和紙と自分のルーツをイメージしたという。
会場には赤や青、黒などの染料が織りなすグラデーションや、柔らかな曲線が印象的な作品が展示されており、水平線から昇る朝日のようだったり、高知の深い山並みに見えたり。自分の手で原料のコウゾから栽培し、作品のためだけにすいた和紙の存在感も相まって、想像力をかき立てる作品が並んでいる。
制作の過程などを和紙に描いたイラストなども展示しており、人里離れた土佐清水の山あいで続ける活動を感じることができる。
地元高知での本格的な個展は今回が初めてという小高さんは「高知はすっかりホーム。地元開催はリラックスだけじゃなく、ある意味緊張感もあるけど、空の雲を見るように気楽に自由に楽しんでもらえたら」と呼びかけている。
会期は6月30日まで。開館時間は午前9時~午後5時。休館日は月曜。入場料は一般500円。最終30日は午後1時から小高さんによる作品解説も予定している。問い合わせは、紙の博物館(088・893・0886)へ。(飯野浩和)
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