2016.06.14 08:15

奇跡の笑顔 全盲・重複障害を生きる(16)「これで終わりか…」

予想外に長引いた県外の病院暮らし。高知で待つ小学4年の兄と2年の姉は、手紙で母と妹を励ました。
予想外に長引いた県外の病院暮らし。高知で待つ小学4年の兄と2年の姉は、手紙で母と妹を励ました。
■夜明け待ちかね祖母を呼ぶ■
 一難去ってまた一難。盲学校(高知市)幼稚部入学がかなった山崎音十愛ちゃんだったが、喜びもつかの間。7カ月もの長期入院が待っていた。

 2009年3月末、香川県の病院で受けた胃の噴門部形成術は、母、理恵さん(49)によると、「手術直後に死にかけていました」となる。

 腹腔鏡手術を終え、集中治療室を経て病室へ戻ってきた音十愛ちゃんは、もうろうとし、苦しげ。どんどん弱り、下顎(かがく)呼吸が始まった。死の間際の呼吸である。

 「苦しんで、あごを上げてするんです」と理恵さん。看護師時代、死の瞬間に何度も立ち会っていたので、すぐに事態をのみ込んだ。

 顔面蒼白(そうはく)。いつまでたっても意識がはっきりしない。「これで終わりか」の思いがよぎる。独りで見送るのは怖い。夜明けを待ちかねて高松の実家へ電話し、祖母らも駆け付けた。

 それから間もなく。「もう駄目だ。医療用の麻薬を止めないと死んでしまう」と直感し、ドクターに頼んだところまでは覚えているが、後ははっきり覚えてない。「あの時の怖さは、私の中でトラウマ(心的外傷)になっているんです」

 何とか切り抜けたものの、今度は原因不明の激しい嘔吐(おうと)が始まった。

 ところで、音十愛ちゃんはなぜ、この手術を受けたのか。新生児はもともと、食道括約筋の働きが未熟なため、胃の入り口の「噴門」が広がっている。普通は成長とともに狭まるが、音十愛ちゃんは広がったままだった。重度心身障害児にはよくあるという。そこで、胃食道逆流症を防ぐため、噴門部を縛って細くしたのだが、消化管の流れがスムーズにいかなかったことが吐き気を誘発したり、さまざまなストレスもたまって中枢性のホルモンのバランスが崩れ、併発したらしい。

 術後のピンチは乗り切ったものの、胃の中へ栄養を注入すると突然のたうち、吐いて吐いて、胆汁まで吐いた。薬で発作を抑えるしかない。そのために絶食して胃を空にし、点滴しながら血液を検査。1、2週間かけて効果のある薬を探していくのだが、「駄目なんです。『発作が収まったからちょっとやってみましょう』と注入するとまた、吐くんです。そして、絶食からのやり直し。『またか』『またか』で点滴の針を打つ所がないぐらいになってしまうほどだったんです」

 香川での入院は73日間におよび、6月上旬に高知大学付属病院小児科へ転院した。

 「もう、限界だったんです。家族とは会えないし、生活費もかさんだし。いろんな意味で参ってました」

 大学病院も嘔吐の原因を見つけるのに苦労したが、観察とホルモン検査を繰り返しているうちに嘔吐が周期的に出現していることに気付き、「周期性嘔吐症」と診断。そこから発作を抑える薬が見つかった。

 退院したのは10月24日。盲学校に復帰できた時、12キロあった体重は9・5キロまで落ちていた。

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