2019.06.07 08:00

【引きこもり対策】孤立させてはならない

 川崎市で児童らが殺傷された事件などの報道が続く。これをきっかけに「引きこもり」について改めて考えたい。
 川崎市の事件は、自殺した容疑者が引きこもり傾向にあったとの報道を受け、犯罪と結びつけられ、誤解や偏見が広がるとの懸念が当事者や専門家らから出ている。
 「引きこもりへのイメージがゆがめられ続ければ、当事者や家族は追い詰められる」「なぜ放置したのかと周囲が責めれば、家族は世間の目を恐れ、孤立を深める」―家族会などが相次いで出した声明からも強い危機感が伝わる。
 私たちは引きこもりを社会全体の問題として捉えるよう訴えてきた。
 具体的には、地域や行政機関などが連携を深め、当事者や家族を孤立させない▽就労面の公的サポートを強化するなどして粘り強く支援する―といった対策を求めてきた。
 その思いを一層強くする。家族らを孤立させることなく、再出発できるよう社会全体で支援したい。
 内閣府は、家族以外と半年以上ほとんど交流していない40~64歳の引きこもりの人が全国に約61万人いるとの推計値を今春公表した。
 2015年に若年層(15~39歳)を対象にした調査は約54万人だった。調査時期に違いはあるが、全体で100万人を超えているとみられる。
 40歳以上の引きこもり期間は7年以上が半数近くを占め、長期化や高年齢化が裏付けられた。さらに、3人に1人が高齢の親に経済的に依存している状態だったという。
 親が80代、本人が50代という「8050問題」が福祉の現場では懸念されてきた。親の年金に頼る生活を余儀なくされている家庭もあり、このままでは困窮家庭がますます増える可能性がある。
 国は相談窓口「ひきこもり地域支援センター」を都道府県などに設け、生活困窮者自立支援法に基づく就労準備などの手助けもしている。
 だが、職員異動や訪問支援に必要なスキルが足らずに支援が途切れてしまう例があったという。一方で、高齢の親の介護などをきっかけに自宅を訪問したヘルパーらが、引きこもりを見つけたケースもある。
 孤立している家庭を把握し、素早い支援につなげるためには、ヘルパーやケアマネジャー、福祉担当職員らがさらに密接に連携していく必要がある。
 内閣府によると、約61万人のうち就職氷河期世代に当たる40~44歳の3分の1が、20代前半で引きこもり状態になったという。就職活動が原因だった可能性が高い。
 そのため国は、就労・就学支援を行う各地の「地域若者サポートステーション」の年齢上限を「50歳ごろまで」へ引き上げるという。就職氷河期は以前から問題視されていた。対応の遅さを指摘しておきたい。
 対象者が抱えている問題や家庭の状況はそれぞれ異なる。違いを十分理解した上で、きめ細かい支援が求められる。

カテゴリー: 社説

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