2019.05.28 08:00

【日米首脳会談】誰のための厚遇なのか

 貿易赤字削減を目指すトランプ米大統領の強い姿勢が改めて浮き彫りになったといえそうだ。
 安倍首相と来日中のトランプ氏の会談がきのう行われ、双方が貿易交渉の早期妥結で一致した。今回は共同声明が見送られたが、両首脳は夏の参院選後に決着を急ぐ取引をしたもようだ。
 共同記者会見では両首脳とも、決着の具体的な時期に言及しなかったものの、トランプ氏は会談の冒頭で「8月に大きな発表ができる」と発言している。前日にはツイッターに参院選までは妥結を待つ趣旨の投稿をしていた。
 米国は日本に対し農業分野などで大幅な関税引き下げを迫っている。農家の不安は大きく、選挙の争点になることを避けたい安倍政権にトランプ政権側が配慮した格好だ。
 逆にいえば、参院選が終われば交渉を加速するという強いメッセージといえる。秋にはトランプ氏の再選がかかる2020年大統領選が実質的に始まるため、トランプ氏は実績づくりに必死になっている。
 早期決着は日本側にメリットがなく、先送り自体は一つの戦術だ。しかし、参院選をやり過ごし、選挙が終われば決着を図るというのは有権者をあまりに軽んじている。
 安倍政権は、トランプ氏を国賓として招き、ゴルフや大相撲観戦などで手厚くもてなした。双方の友好関係を国際社会に示す狙いがあるとしても、選挙対策とご機嫌取りのためと勘繰られても仕方がない。
 国政選挙で、実績や政策について国民に堂々と審判を受けるのが政権与党であるはずだ。誰のための厚遇なのか、何のための交渉なのか問われる。
 トランプ氏は、環太平洋連携協定(TPP)から一方的に離脱した。日本側は、関税協議はTPPでの取り決めが土台になるとの姿勢だが、トランプ氏は会見でもTPPについて「わたしは関係ない」「米国は縛られない」と強気だ。
 参院選後まで先送りした見返りに大幅譲歩を迫られる事態も予想される。無責任なのは米国であり、安易な妥協は許されない。安倍政権には毅然(きぜん)とした交渉姿勢が求められる。
 北朝鮮問題でも米国の姿勢は気掛かりだ。拉致被害者の帰国に向け、日米で連携していくことを確認できた意義は大きいが、短距離ミサイルの発射についてトランプ氏は「国連安全保障理事会決議違反ではない」との見方を改めて示した。
 これでは米国に届かないミサイルならば認めるという誤ったメッセージになりかねない。日本にとっては北朝鮮の脅威は変わっておらず、圧力を高めるには米国としっかりと議論する必要がある。
 安倍首相は会見でトランプ氏との信頼関係や日米同盟の絆を誇った。そうであるならば温度差があるテーマでも正面から議論し、納得のいく合意をつくり上げる関係でなければならない。おもてなしと追従に終わってはなるまい。
カテゴリー: 社説

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