2019.05.27 08:00

【食品ロス削減】官民で取り組み広げよう

 まだ食べられるのに捨てられる「食品ロス」を見直す大きな契機としたい。
 超党派の議員連盟が法案をまとめた食品ロス削減推進法が成立した。生産から消費までの各段階でロスを減らす取り組みを「国民運動」と位置付ける。政府が基本方針をつくり、自治体には方針を踏まえた具体的な推進計画を作成する努力義務を課した。
 内閣府に設ける有識者らの会議が方針を決める予定だが、現場の意見を取り入れながら国民に分かりやすい目標を示してほしい。例えば、政府が重視している国連の「持続可能な開発目標」は、1人当たりの食品廃棄を世界全体で2030年までに半減する計画を掲げる。
 企業や行政だけでなく、国民一人一人が目標を自覚して行動しなくては、食品ロスは減りはしない。官民が参加する幅広い国民運動とするためにも計画づくりが肝心だ。
 日本の食品ロスは16年度の推計で643万トン。近年、600万トン台で高止まりしている。コンビニやスーパーの大量廃棄が問題になっているが、小売業は全体の1割程度という。
 製造業と外食がそれぞれ約2割を占め、食べ残しを主因にした家庭でのロスが291万トンと最も多く4割以上に上る。このことからも、外食や家庭などでいかに食べ残しを減らすかが鍵を握る。
 恵方巻きの大量廃棄の画像がツイッターなどで昨年流れ、農林水産省がこの1月、「需要に見合った販売を」と小売団体に異例の要請をした。消費期限が近い弁当などを実質値引きし、売れ残り品の廃棄を減らそうとしているコンビニ大手もある。どうすればロスが減るか、行政や企業は絶えず試行錯誤が必要だ。
 県内の量販店も対策を進めている。サニーマートは、消費期限が近づいた商品にシールを貼って、それを集めるとくじが引ける取り組みを全店で始めた。古くなった総菜や生鮮食品を割引する以外の販売促進策で、買い物客にもおおむね好評という。こうした地道な運動を着実に広げたい。
 世界の食料廃棄は年13億トン。この状況で8億人以上が栄養不足に苦しんでいる。新潟市で今月開かれた20カ国・地域(G20)農相会合の閣僚宣言には、ロス削減を各国が主導していくことが盛り込まれた。開催国としての日本の役割は大きい。
 今回の推進法成立を受け、経済的に苦しい家庭などに食べ物を無償提供している「全国フードバンク推進協議会」は自治体との連携を期待している。新法には行政からフードバンクへの支援も盛り込まれているからだ。有効活用できる手段が広がればロス削減につながる。
 ノーベル平和賞の受賞者、ワンガリ・マータイさんは「もったいない」を昔から重んじてきた日本の文化を称賛した。しかし、意識しないとその精神は徐々に失われてしまう。食育などを通して若い世代に引き継ぎたい。
カテゴリー: 社説


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