2016.06.12 08:25

奇跡の笑顔 全盲・重複障害を生きる(14)子供を預けフル回転

入学運動に際し「音十愛ちゃんニュース」も出た
入学運動に際し「音十愛ちゃんニュース」も出た
 重症心身障害児者施設「土佐希望の家」(高知県南国市)は山崎理恵さん(49)にとって文字通り、希望をくれた。理恵さんはそれまで、施設の存在も、障害児家庭向けの「レスパイト(休息)サービス」も知らなかったのだ。

 レスパイトは、在宅介護で疲れた家族を救う支援制度。高齢者介護の中でも使われている。希望の家のデイサービス「やまびこ」では、午前10時から夕方まで在宅の重症児を預かってくれた。

 最初の内はフルタイムで母も付き添うが、子供の特徴を職員がのみ込むと、母親は施設を抜け出て自分の用事ができるのだ。さらに慣れると、施設側の車送迎も利用できる。そうなると、母親は家で見送れるので大助かり。昼間の自由時間が大幅に増えるのだ。利用は週に1~3回である。

 「自分が休んでいいんだって、あの時、初めて知ったんです。それまで、音十愛を人に預けるなんて考えたこともなかった」と理恵さん。すぐに手続きをした。盲学校幼稚部に入れなかった場合に備え、盲学校の「ひまわり教室」と併用することで、発育機会の確保を考えたのだ。

 予防接種や行政への利用申請を経て2008年3月から「やまびこ」の利用を始めたが、ここから予期せぬ展開となる。理恵さんの日々が一気に慌ただしくなったのだ。

 ひまわり、やまびこ両教室の活用開始直後に、一家5人は義父母宅から独立した。落ち着くまでに約2カ月かかる。そこへ高知県母親大会での発表が入り、盲学校入学運動が動きだす。さらに、9月には口蓋裂(こうがいれつ)の手術が決まった。何もかもが同時に走りだしたのだ。

 忙殺された理恵さんは、その日その日に精いっぱいで、当時のことをあまり覚えてない。その目まぐるしい活動を支えてくれたのがレスパイトだった。娘を「やまびこ」に預けている間に母は入学運動の打ち合わせをし、署名運動の協力を求めてあいさつに走り回ることができた。

 レスパイトは、母の行動力を高めるとともに、少しだが、心にゆとりを芽生えさせた。それは、母親同伴期間が終わった直後の8月半ばのこと。当時の通園事業担当だった現療育課長、浜田美和さん(47)は今も覚えている。

 「夕方、お迎えに戻って来たお母さんの雰囲気が、朝と違ってたんです。『どこ行っちょった?』。『美容院!』って。3年半ぶりだったそうです。それまで長い髪を束ねてお疲れ気味だったのが、すっかりさわやかに。ジーンときて、一緒に泣いてしまいました」

 兄姉(きょうだい)を連れてレジャープールへも出掛けた。失っていた家族の時間を少しずつ穴埋めしていった。

 そして、レスパイトとは別に、入学運動真っ最中に2週間、高知を離れて神戸で受けた口蓋裂の形成手術も、思わぬ効果を呼んだ。高知県教育長が「口から食べられる可能性が出たのなら、いずれチューブも外せるはず。医療的ケアが不要になる道が開けた」と受け入れ理由の一つに挙げたのだ。

 目前の課題にフル回転でアタックした結果が、すべて良い方向へつながった。

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