2019.05.18 08:00

【華為の排除】米中に冷静な対話求める

 米中の対立がより深刻な方向に進み始めたようだ。
 トランプ米大統領が、安全保障上の脅威があると認められる通信機器を米企業が使うのを禁止する大統領令に署名した。中国の通信機器大手「華為技術(ファーウェイ)」の製品などを想定した措置だ。
 米政府は昨年、政府機関がファーウェイ製品などを使うことを禁止。それを民間にも広げ、政府や企業の重要情報が通信機器を通して中国側に流れることを防ぐ考えだ。 
 併せて、米企業がファーウェイやその子会社に政府の許可なく電子部品などを輸出することも禁じた。米国の制裁対象であるイランの金融取引に関わったためとし、やはり安全保障を理由にしている。
 製品を使わせないだけでなく、部品の供給網を絶ち、作らせない構えだ。あまりに乱暴な手法と言わざるを得ない。
 中国との貿易交渉の切り札としてファーウェイの狙い撃ちを始めたとの指摘もあるが、単純な駆け引きとは言い難い。
 ファーウェイは中国を代表するハイテク企業だ。スマートフォンやパソコンなどの製造のほか、次世代移動通信システム「5G」や人工知能(AI)の開発で世界をリードしつつある。
 習近平指導部が進めている国家発展戦略「中国製造2025」でも中核を担っており、中国の国家威信を背負った企業といってよい。
 ただ、5GやAIは経済的な覇権に加え、安全保障をも左右する。米国は警戒を強めてきた経緯があり、いずれ米中の「技術冷戦」に火が付くことは十分予想された。
 中国側は徹底抗戦する構えだ。このままではこれまで以上に世界を混乱に陥れることになる。双方に冷静な対話が求められる。
 ファーウェイはスマホなどの製造に日本のメーカーからも多くの部品を調達している。その額は昨年6700億円規模にも上った。生産に支障が出れば、日本のメーカーも影響は免れまい。米中貿易摩擦で景気の悪化が心配される日本経済は、一層深刻な事態になりかねない。
 米国が日本に同様の締め出し措置を求めてくる恐れもある。そうなれば、日米安保の関係から日本が拒否するのは難しいとの声も聞かれる。事態が深刻になる前に日本政府は仲介に入るなどして両国に働き掛けをしていきたい。
 中国側にも問題はある。
 ファーウェイは民間企業ながら、中国政府や人民解放軍との関係の深さが指摘され続けてきた。通信機器に仕様書にはないポート(通信の出入り口)が見つかった事例もあり、中国への情報漏えいにつながるのではとの疑念を生んでいる。
 米政権の強引な手法も批判されて当然だが、中国側も疑念を解消していく努力が欠かせない。単に技術に優れ、コストが安いだけでは信頼を得ることはできないことを自覚すべきだ。

カテゴリー: 社説

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