2019.05.10 08:00

【絶滅危機100万種】致命的な未来は避けたい

 世界で100万種の動植物が絶滅の危機にひんしている―。衝撃的な報告書を国連の科学者組織が発表した。
 地球温暖化やプラスチックごみによる海洋汚染…。人間の活動に伴うさまざまな弊害が、地球をむしばんでいる深刻な実態が改めて浮き彫りとなった。
 発表したのは「生物多様性および生態系サービスに関する政府間科学政策プラットフォーム(IPBES)」。地球規模で行った総合的な評価は初めてという。
 それによると、100万種は評価対象の4分の1に当たる。陸上の50万種は生息地が脅かされ、40%以上の両生類と、30%程度のサメと海洋哺乳類に絶滅の恐れがある。海洋プラスチック汚染は1980年の10倍に増え、ウミガメや海鳥など260種以上に悪影響を及ぼしている。
 地球温暖化対策で産業革命前と比べた気温上昇を2度に抑えても、サンゴ礁の面積は1%未満まで縮小するとも予測している。
 深刻なのは種が絶滅する速度だ。過去1千万年の平均と比べて、数十~数百倍も速くなっているという。このままの状態で暮らしを支える自然の恩恵が損なわれていくとしたら、それは人間にとって致命的となろう。
 2010年に名古屋市で開かれた生物多様性条約の締約国会議を思い起こしたい。
 20年までに種の絶滅や減少を防いだり、生息地の消失速度を半減させたりするといった「愛知目標」を採択したものの、これまでの達成状況は芳しくなかった。IPBESの報告はそれを裏付けるものだが、むろん、ここで「白旗」を上げるわけにはいかない。
 目標の達成には、先進国と途上国の協調態勢の構築が鍵とされた。生態系保護のための技術協力や資金援助、情報共有や人材育成は十分に行われているか。各国が検証し、いま一度取り組みを強化しなければならない。
 消費者一人一人の意識やライフスタイルも問われる。
 レジ袋や食品包装など使い捨てプラスチックの大量消費をどう見直すか。生態系への影響が少ない方法で栽培された農産物や、本県で盛んなカツオ一本釣りなど資源管理に配慮した漁法への理解をどう広げていくか。そうした取り組みも生物多様性の保全につながろう。
 愛知目標を主導した日本の役割はとりわけ重要なはずである。ところが昨年、先進7カ国(G7)首脳会議で採択されたプラスチックごみの排出規制を強化する憲章に署名しなかった。沖縄県名護市辺野古で進む米軍普天間飛行場の移設工事でも、生物多様性の豊かな海が土砂で埋められている。
 今年6月、大阪で開かれる20カ国・地域(G20)首脳会合ではプラスチックごみ対策が主要議題となる。人の生存に不可欠な自然を守るため再度、日本がリーダーシップを発揮し各国の熱意を呼び起こしたい。
カテゴリー: 社説

ページトップへ