2019.05.08 08:00

【米軍機ニアミス】国は事前情報を提供せよ

 日本の安全に寄与すべき日米安全保障条約が、県民の安全を脅かしている状態がまた明らかになった。
 2017年12月、徳島県境付近を飛行していた高知県消防防災ヘリに米軍機が後方から急接近し、ニアミスの状態で抜き去っていたことが分かった。
 ヘリ操縦士は、両機はほぼ同じ高度で、距離は目視で200メートルほどだったと証言している。客観的に見て非常に危険な状況だ。速度の違いからヘリになすすべはないだろう。県のヘリは「注意して飛ぶ」しかない状態が続いているという。
 本県上空には「オレンジルート」と呼ばれる米軍機の訓練経路がある。県内への飛来は昨年で23回、過去5年間で168回に上る。
 4月には嶺北地域上空で、米軍機が超低空で飛行した約40分後、高知医療センターのドクターヘリが同じ空域を飛ぶ事態も発生した。ヘリの操縦士らは高知の上空で、米軍機との事故のリスクを否定できないまま飛行していることになる。
 こうした状態を放置している責任は政府にある。
 日本上空を飛ぶ米軍機の個別の「飛行計画」は、国土交通省や防衛省が事前に把握していることが分かっている。本紙の取材に対し、13年に国交省などが認めた。
 航空法の規定で、日本上空を飛ぶ航空機は出発地や出発時刻、経路、所要時間などの飛行計画の通報が原則として義務付けられている。米軍機に関しても、飛行開始の前に米軍から防衛省、さらに国交省に伝達されているという。
 県は以前から、出動中の消防防災ヘリやドクターヘリの安全を確保するために、事前の情報提供を政府に求めてきた。
 しかし、両省とも「飛行計画は米軍の運用に関わること」として、自治体への情報提供を控える姿勢を続けている。
 ただ、本当に隠さなければならない情報ならば、米軍が飛行計画という形で通報することはないだろう。政府が一方的に忖度(そんたく)した結果、日本の国民を危険にさらしているとすれば、本末転倒も甚だしい。国は事前情報を提供すべきである。
 全国知事会は昨年8月、日米地位協定の抜本的見直しを求める提言書を政府に提出した。米軍機の低空飛行訓練などについては、訓練ルートや訓練時期の速やかな事前情報提供を求めている。
 その研究会資料では、同様の協定の改定や新協定を締結し、米軍への国内法の適用強化や、訓練への規制強化を実現したドイツやイタリアと日本の比較もしている。
 米軍の訓練や演習に関する日本の関与は「規制権限はなく、詳細な情報も通報されず、政府としても求めることもしないという姿勢」と厳しく指摘した。政府は隷属的ともいえる姿勢を改めるべきではないか。
 重大な事故が起きてからでは手遅れになる。県も粘り強く政府に要請を重ねなければならない。

カテゴリー: 社説


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