2019.04.27 08:00

【原発のテロ対策】規制委の存在も問われる

 原発が大型航空機の衝突などのテロ攻撃を受けた場合にも、原子炉を冷却し続ける「特定重大事故等対処施設」の設置について、原子力規制委員会は完成期限の延長を認めない方針を決めた。
 四国、関西、九州3電力が期限内の完成は難しいとして延長を求めていたが、拒否した格好だ。
 設置は、東京電力福島第1原発事故後の新規制基準で義務付けられており、期限内に完成しなければ、稼働中の原発も停止になる。四国で唯一稼働中の伊方原発3号機も2021年3月の期限に対し、完成が1年ほど遅れる可能性がある。
 原発の安全対策の約束が守れない電力会社に、原発を動かす資格はあるまい。規制委方針は当然であり、規制委は今後も厳格な姿勢を貫く必要がある。
 特重施設は、注水設備や電源、緊急時制御室などからなる原子炉冷却のバックアップ施設だ。テロで原子炉建屋と同時に被災することを防ぐため、建屋から100メートル以上離して設置する。冷却機能を失った福島第1原発事故を教訓にしている。
 敷地が狭い原発は山を切り崩すなどして建設する必要がある。確かに時間も経費もかかるだろうが、再稼働させた以上、電力会社は期限内に完成させるのが筋だ。
 しかも、完成期限は再稼働までに必要な手続きのうち「原発本体の工事計画の認可」から5年と定められている。どの原発も一定の工事期間が確保されている。
 ところが、再稼働原発を持つ3電力はそろって延長を求め、期限内に完成しそうな原発は1基もない状況だ。見通しの甘さというより、「甘え」と指摘されても仕方がない。
 関西電力はそれでもなお、規制委に代替の保安措置を示して、方針の適用除外を働き掛ける構えだ。
 規制委の更田豊志委員長は記者会見で「差し迫ってきて訴えれば何とかなると思われたのだとしたら、それは大間違いだ」と電力会社を厳しく批判した。各社は重く受け止める必要がある。
 原発は国策であり、電力会社はいわば護送船団方式で守られてきた。だが、原発事故を経験し、その甘えは捨てなければならない。
 規制委も原発事故後に発足した機関だ。前身の旧原子力安全・保安院は「電力会社のとりこ」「独立性、透明性、専門性の不備が安全対策徹底の遅れを招いた」と批判され、解体された。
 新たな組織となってからも、独立性や電力会社との関係は国民から常に監視されている。特重施設を巡って例外を認めるようなことになれば規制委の方が信頼を失うだろう。規制委の存在も問われているといってよい。
 原発を停止したとしても、原子炉建屋内の使用済み燃料プールには核燃料があり、テロ攻撃を受けた場合のリスクは残る。原発の安全確保には課題が多い。電力会社も規制委も一層の緊張感が求められる。
カテゴリー: 社説

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