2019.04.26 08:00

【スリランカ】爆破テロの余波が心配だ

 衝撃は犠牲者の数だけではない。遠くの国で起きた事件に対する報復の可能性が出てきたことだ。
 スリランカのキリスト教会やホテルなど8カ所で爆破テロが相次ぎ、350人以上の信徒や外国人らが死亡した。日本人も5人が死傷した。
 現地当局の捜査では、3月にニュージーランドのモスク(イスラム教礼拝所)で起きた銃乱射事件の報復の疑いがあるという。
 国内のイスラム過激派が関与したとみて、当局は既に数十人を拘束したもようだ。真偽は不明ながら、過激派組織「イスラム国」(IS)が「実行したのはIS戦闘員だ」とする犯行声明も発表した。
 これまでスリランカでは、イスラム過激派の活発な動きは把握されてこなかった。テロの規模の大きさを考えても、国際的組織の支援があった可能性は否定できない。動機や背後関係の全容解明が急がれる。
 報復であれば、さらなる余波も心配だ。国際社会もテロに毅然(きぜん)とした姿勢で立ち向かい、捜査や再発防止に協力する必要がある。
 被害に遭った教会では、復活祭の行事が行われていた。犯行の大半が自爆テロだったとみられ、多くの人が集まる場所とタイミングが狙われたことは間違いない。
 スリランカは多民族国家で、シンハラ人中心の仏教徒が人口の約7割を占める。その他はタミル人のヒンズー教徒が1割強で、イスラム教徒やキリスト教徒はいずれもさらに少ない。
 1983年ごろから、シンハラ人主体の政府軍と独立を求めるタミル人武装組織「タミル・イーラム解放のトラ」の内戦が発生。テロも相次いだが、政府軍が掃討し、2009年に内戦が終結した。
 その後は復興や経済成長に力を入れ、治安も比較的安定していた。昨年、過激化した仏教徒とイスラム教徒が衝突する事件はあったが、イスラム教徒とキリスト教徒は比較的対立が少なかった。
 今回のテロは誰もが想像しなかった構図と規模といってよい。現状ではなぜスリランカで起きたのかも見えてこない。だからこそ国民には冷静な対応が求められる。再び国内で宗教間対立や国民の分断が起きることは避けなければならない。
 ニュージーランドの事件は白人至上主義者による犯行だった。その報復テロが起きたとすれば、応酬が繰り返される恐れがある。
 ISは本体が弱体化したものの、過激思想は世界に拡散している。新たな事件が新たな国で起きないとは限らない。16年に日本人7人が死亡したバングラデシュのテロと、今回のテロは実行犯グループにつながりがある可能性が指摘されている。
 各国で十分な警戒が欠かせない。東京五輪・パラリンピックなどを控える日本も例外ではない。
 市民を狙ったテロはひとたび起きると、激しい怨嗟(えんさ)を生む。国際社会が連携してこれ以上の悲劇を防ぎ、憎しみの連鎖を断ち切りたい。

カテゴリー: 社説

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