2019.04.04 08:00

【陸自シナイ派遣】海外活動の拡大に危惧

 政府はエジプト・シナイ半島でイスラエル、エジプト両軍の停戦を監視する「多国籍軍・監視団(MFO)」の司令部に、陸上自衛隊の幹部自衛官2人を派遣する計画を閣議決定した。
 2015年に成立した安全保障関連法は、国連が統括していないものの、国連平和維持活動(PKO)に似た活動を「国際連携平和安全活動」と規定。PKO参加5原則などの条件を満たせば、自衛隊を派遣できるようにした。今回はその初適用となる。
 国民の理解を置き去りに、安保法に基づく自衛隊の海外活動が拡大していくことを危惧する。
 「積極的平和主義」を掲げる安倍政権は、自衛隊の海外派遣の拡大に意欲を示している。一方で17年に南スーダンPKOから陸自部隊が撤収して以降は、アフリカ東部ソマリア沖での海賊対処活動などにとどまっている。米国中心のMFOから要請されていたシナイ半島派遣を、目に見える「国際貢献」の新たな実績づくりとする狙いがあろう。
 4度の中東戦争で対立したエジプトとイスラエルは、40年前に平和条約を締結。現在、両国関係は比較的安定している。司令部要員であれば直接、戦闘に参加することはないという判断もあろう。
 とはいえ、次の段階として今後、陸自部隊の派遣を要請されることはあり得るだろう。国連が統括しないMFOが、自衛隊の海外派遣をなし崩し的に広げる「アリの一穴」になりはしないか。
 南スーダンPKOでは、武装集団に襲われた国連職員らを救出する「駆け付け警護」などが新任務として付与された。MFO派遣で活動が拡大すれば、海外で自衛隊員が相手を殺したり、殺されたりする事態も想定されよう。それを受け入れる覚悟が、広く国民にできている状況だとはとても言えまい。
 安保法案の国会審議で、国際連携平和安全活動に関する議論は十分行われなかった。南スーダンPKOも、自衛隊員が「戦争だった」と指摘するほど危険な駐留であったことが判明している。にもかかわらず陸自日報の隠蔽(いんぺい)問題もあって、まともな検証はされていない。
 こうしたことを踏まえれば、MFOを含む自衛隊の海外派遣についていま一度、国会で深く議論する必要がある。
 そもそも安保法を巡っては「憲法違反」の疑いが払拭(ふっしょく)できていない。歴代政権が憲法上許されないとしてきた集団的自衛権の行使を、安倍政権が一転、憲法解釈の変更によって認めたからだ。今年3月、施行から3年を迎えたが、今も多くの裁判所で違憲訴訟が続いており決着はついていない。
 自衛隊が平時から、米軍艦艇などを守る「武器等防護」も急増している。国論が二分された状態のまま、新任務の既成事実化を急ぐ―。そうした姿勢では、国民の理解も自衛隊への信頼も深まることはない。
カテゴリー: 社説


ページトップへ