2019.04.04 08:00

小社会 花見の風習が、広く庶民に行き渡ったのは江戸時代...

 花見の風習が、広く庶民に行き渡ったのは江戸時代。貧乏長屋の大家と店子(たなこ)たちが花見に繰り出す落語、「長屋の花見」のようなドンチャン騒ぎが始まった。

 作家の中野孝次さんが、桜が近現代の文学に与えた影響を随筆に書いている。かいつまんで言えば、明治の軍国主義で桜は国花となり、大和魂の象徴とみなされた。花見の習慣もそのまま引き継がれた。〈寝て聞けば上野は花のさわぎかな〉子規

 その後、明治も末期になると、桜の古木は枯れ、文学の上でも花見ははやらなくなった。石川啄木などは桜を歌っていないという。文学は孤独な個人の心に目を向け始めた。

 大正まで来ると、もう花見の詩を見いだすのさえ難しい。歌人の斎藤茂吉にも桜の歌は乏しく、梶井基次郎の「桜の樹の下には屍体(したい)が埋まっている!」が衝撃を与えた。谷崎潤一郎が戦後「細雪」に王朝風ののどかな花見を描いたのは、そういう時代風潮への抵抗だった。

 詩人や作家という人々は、桜一つにも鋭敏な目を向ける。集団で飲めや歌えやと騒ぐ花見を俗なものと見なしたのかもしれない。だが、それは作家個人が感じた桜であって、私たちの見方も自由だ。
 
現に花見となれば、ブルーシートを敷いて場所取りにいそしむ人がいる。現代の庶民には案外、一見平凡だが奥深い味わいのある、昔の一句が似合いかもしれない。〈さまざまのこと思ひ出す桜かな〉芭蕉。


4月4日のこよみ。
旧暦の2月29日に当たります。かのと ひつじ 二黒 赤口。
日の出は5時51分、日の入りは18時28分。
月の出は5時30分、月の入りは17時24分、月齢は28.5です。
潮は大潮で、満潮は高知港標準で5時48分、潮位162センチと、17時47分、潮位164センチです。
干潮は11時45分、潮位37センチと、23時59分、潮位24センチです。

4月5日のこよみ。
旧暦の3月1日に当たります。みずのえ さる 三碧 先負。
日の出は5時49分、日の入りは18時29分。
月の出は6時00分、月の入りは18時20分、月齢は29.5です。
潮は大潮で、満潮は高知港標準で6時11分、潮位167センチと、18時20分、潮位170センチです。
干潮は12時13分、潮位27センチです。

カテゴリー: 小社会コラム


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