2019.04.02 08:00

【新元号「令和」】皇位継承にあいた風穴

 「平成」に代わる新しい元号が、「令和(れいわ)」に決まった。
 新元号は、新天皇となられる皇太子さまが即位する来月1日にスタートする。
 「令和」の出典は「万葉集」で、中国古典でなく、国書(日本古典)から採用した。元号史上、初めてのことという。典拠は「初春(しょしゅん)の令月(れいげつ)にして、気淑(きよ)く風(かぜ)和(やわら)ぎ」による。
 初めてという点でより重要なのは、皇位継承前の新元号公表が憲政史上初ということだ。3年前、天皇陛下自らが、退位の思いを強くにじませたビデオメッセージを公表されたことに端を発する。
 高齢化社会における象徴天皇の在り方はどうあるべきか。語られた内容に、多くの国民は賛同した。政府や国会も重く受け止め、退位特例法が成立した。
 改元は明治以降、天皇一代に一つの元号とする「一世一元」制が採用されてきた。皇位継承には天皇の逝去が伴うため、昭和の改元の「自粛ムード」のように、重苦しい雰囲気も生まれた。
 今回、安倍首相が改元の1カ月前に新元号を公表すると表明した際、「一世一元」制を重視する保守派から反発が起きた。しかし、退位特例法の国会での付帯決議は、「改元に伴って国民生活に支障が生じないようにする」ことを求めている。
 元号は官民の情報システムにも用いられているため、改修作業には一定の時間が必要だ。伝統を重んじる元号制といえども、時代の波に洗われているのである。
 万葉集を出典とするなど、目新しい点もある「令和」だが、選定の手続きはほとんど変わっていない。政府が「平成」改元時の手続きを踏襲すると事前に決めたからだ。
 新元号を公表した後も考案者は明かさない。決定に先立ち各界の代表者を集めた有識者懇談会を開き、原案への意見を求めるが、本格的な議論は行わず、実質は原案を追認する形だ。密室で決めたという批判をかわす狙いだろう。
 これでは選定状況は厚いベールに包まれたままだ。元号選定という歴史的な作業は国民から遠ざけられ、検証することもできない。
 こうした権威主義的な手法が、国民主権を掲げる憲法と整合性を保てるだろうか。まして憲政史上初めての皇位継承前の新元号公表だ。首相は決定過程に関する公文書を非公開とする期間を30年で検討するというが、なぜそんなに長く伏せるのか。
 今回の新元号公表で、元号とは何かと思いを巡らせた方も多かろう。公表日を事前に決めたことで、元号予想も盛んに行われた。普段はさほど気に留めない元号を、身近に感じた人もいるだろう。
 利便性などから西暦を使う人が増えている一方で、元号は習慣として定着していると言えるだろう。どちらを使っても個人の自由であり、それには時代の流れも反映する。「令和」への代替わりでも秘密主義を排した、開かれた議論を望みたい。
カテゴリー: 社説

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