2019.04.01 08:00

【核燃処理費転嫁】消費者の理解得られまい

 原発で使用された核燃料の再利用事業で、関西電力がまだ具体的な計画も立っていない使用済み核燃料の再処理工場の費用を電気料金に転嫁し始めている。九州電力も4月から予定し、他の大手電力も続くとみられる。
 関電、九電は費用転嫁を消費者に説明していない。新たな再処理工場を建設するとなると、総事業費は12兆円近くにも上ると試算されている。巨額の負担を強いる料金改定を伏せるような電力会社の姿勢は、消費者を軽視していると受け止められても仕方ない。
 使用済み核燃料を化学処理し、原発で再利用する日本の核燃料サイクル政策が行き詰まっているのは明らかだ。将来展望も、実現性も不透明な原子力事業の費用を国民に負担させる料金制度を消費者が納得できるだろうか。電力会社側の丁寧な説明と、オープンな場での議論を尽くすべきだ。
 電力各社が出資する形で青森県六ケ所村に再処理工場が建設中だが、その対応力を上回る使用済みの核燃料やプルトニウム・ウラン混合酸化物(MOX)燃料を扱うためとして、「第2再処理工場」が構想されている。2007年に事業費を11兆7千億円とする試算が公表されたものの、計画は具体化していない。
 第2工場構想は、東京電力福島第1原発事故が起きる前に浮上し、当時は原発の新増設を想定していた。だが、原発事故後、新たな原発建設は困難になり、六ケ所村の再処理工場もトラブル続きで完成延期が繰り返されている。
 再処理工場でプルトニウムを取り出しても、核燃料サイクルが機能しなければ、核兵器にも転用可能とされる危険物質は行き場がなくなる。第2工場の必要性や緊急性を見いだせないのが実情だろう。
 関電は17、18年の家庭向け電気料金の値下げに併せ、第2工場の費用を盛り込んだ。大手電力会社には政府の規制を受ける料金の認可制度が残る。値上げの場合は費用転嫁などについて有識者の審査を要する一方、値下げは審査が原則不要で、細かく議論されない。
 国や電力会社が値下げの内訳などを公表しなければ、消費者は何の費用が加減されたのか分からない。値下げは一見、消費者の利益のように映るが、合理的な根拠のない費用が加わるとすれば、新たな負担増に他ならない。
 使用済み燃料の再処理費用を認可法人に拠出するよう、電力会社に義務付ける制度が16年に設けられた。関電などはこの制度改正を料金への費用転嫁の理由にする。そうではあっても、実体もない事業の巨額費用を消費者に求めるのなら、電力会社はより重い説明責任を負う。
 情報が公開されなければ、消費者は是非を判断できない。まして、原発政策への国民の不信が強まる中、実現の見込みも立たない事業費の料金転嫁に消費者の理解が得られるとは思われない。
カテゴリー: 社説

ページトップへ