2019.03.25 13:49

高知で異色の男性ネイリスト スポーツマンがなぜ美容家に?

【WEB限定】高知市愛宕町の美容サロンBlanc Rose(ブランローズ)。15年以上通う常連客の女性が、ジェルネイルの付け替えに訪れていた。器具を使い、爪先に取り付けたジェルを丁寧にはがすのは、稲垣良平さん(40)。高知では珍しい男性ネイリストだ。


「爪がコンプレックスだったんですよ」指先を眺めながら、女性がつぶやく。子どもの頃に深く切りすぎて不恰好な形になってしまったという女性の爪は、サロンでケアを続けるうちに綺麗なラウンド型の爪に成長し、「スーパーのレジで褒められる」ほどの、自慢のパーツになった。


高齢の家族と暮らし、家事にパートにと忙しい日々を送るなか、3~4週間に一度、このサロンで過ごすひと時が、女性にとってかけがえのない時間になっている。「よう笑うんですよ、ここ来ると。ネイルしに来てるんか、笑いに来てるんかわからんくらい」。おしゃべりが止まらない、明るい店内の中心にいるのが、稲垣さんだ。

稲垣さんは三重県鈴鹿市の出身。幼少期からサッカーに打ちこみ、関西の大学へはスポーツ推薦で入学。今でも趣味のランニングに熱を注ぐスポーツマンだ。美容の世界に足を踏み入れたのは「ほんとにたまたま」という。

仕事中も着ているピンクのランニングシャツがトレードマーク
仕事中も着ているピンクのランニングシャツがトレードマーク

「就職活動のときに、とりあえず知っている会社受けていって、最終的に証券会社と化粧品メーカーのノエビアの内定をいただいて」。当時母親が言った「人を綺麗にして喜んでもらえる美容の仕事って、いいよね」の一言に背中を押され、ノエビアに総合職として入社。神戸本社の採用となり、初めて赴任したのが高知だった。

ノエビア入社当時の写真
ノエビア入社当時の写真

営業職として県内のノエビア販売代理店が運営する美容サロンをまわり、店の販売管理のほか、客へのエステ施術も経験した。「全然縁のなかった世界ですけど、やってみると面白くて。郡部のほうに行くと中高年のお客さんが多くて、若い男性にやってもらうと若返るわ~とか言って、喜んでくださったり」。母の言葉どおり、喜びを受け取れる美容の仕事に夢中になった。


ただ、「大きな組織のなかで出世していく将来に全然興味もてなくて。単純に、お客さんが喜んでくれるのが嬉しいし、人と話すのが面白いんで」。30歳を前に、営業先だったノエビア販売店のオーナーの佐田さんに誘われる形で、Blanc Roseに入社。オーナーである佐田さん親子と稲垣さんの3人で切り盛りするBlanc Roseは、フェイシャルなどのエステティックからネイル、美容用品の販売まで提供する美の総合サロンとして地域に根付いている。

オーナーの佐田さん親子と稲垣さん
オーナーの佐田さん親子と稲垣さん

「綺麗にしても旦那は気づいてくれへん、とか、彼氏とうまくいかんとか。男性やから言いやすい話もあるんかなぁ」。ゆるくやってるだけ、と本人はいうが、客の細かい変化や要望をくみとり、豊富な話題で楽しませる接客に、佐田さんらからの信頼も厚い。「女性同士だと言いづらい事を、彼がズバッと言っても怒られない。稲垣だからできる接客があるんですよね」。

たまたま選んだ仕事から偶然たどり着いた高知で、予想もしなかったネイリストの職について10年。若き日の写真を見ながら「当時の自分からは考えられへんような人生。でも先が分からんほうが楽しいですよね」と笑った。

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