2019.03.22 08:00

【官邸の質問制限】知る権利の侵害許されず

 首相官邸が官房長官記者会見で東京新聞の記者が向けた質問を「事実誤認」と問題視し、質問制限とも取れる要請文を官邸記者クラブに出した問題で、言論界などから懸念や抗議が強まっている。
 官邸は記者の質問を規制するような意図はないとするが、要請文は「度重なる問題行為」と決め付け、記者クラブ側に「問題意識の共有」を求めている。報道の自由を制限するかのような政権の思惑を読み取らないわけにはいかない。
 権力機関に対する質問は、事実関係を確認し、権力が国民のために適正に行使されているのかを明らかにするためだ。質問を「事実誤認」と否定するなら、政権側がその場で正しいとする事実を示せばいい。
 その説明が事実かどうかをまた取材し、真相を明らかにするのが、メディア側に託された権力監視の使命である。政権の意に沿わない記者を特定して排除し、マスコミを分断しようとしているのだとしたら、報道への圧力や妨害に他ならない。断じて容認できない。
 要請文は官邸の報道室長名で、東京新聞記者が沖縄の米軍普天間飛行場の移設工事を巡り「埋め立て現場で赤土が広がっている」などと述べた質問を「事実に反する」と断定。国内外に「事実誤認を拡散させる」などと遺憾の意を示した。
 東京新聞にはこれまでも9件の質問に絡み、官邸側から申し入れがあったという。官邸側が同紙の記者を「特定の記者」とし、「事実に基づかない質問」の常習者のように捉えていた可能性もある。
 記者会見の司会役の報道室長はこの記者が質問中、頻繁に「簡潔に」などと遮るような発言を差し挟んでいるという。「特定の記者」への敵視さえ透ける。
 官房長官記者会見は全国の新聞社などで構成する「内閣記者会」が主催し、質問内容に制限はない。限られた時間の会見の中で、仮に個別の記者の質問時間が長過ぎるような状況があったとしても、それを問題にするかどうかは、記者クラブ側が自発的に考えるべきことだ。
 東京新聞は検証記事を掲載し、「事実誤認との指摘は当たらない」と反論した。新聞関係者らの団体や識者も「国民の知る権利が侵害される」などと危機感を訴え、官邸への抗議を相次いで表明した。
 それでも官邸は要請文を撤回する方針はないとかたくなだ。その強硬な態度は、トランプ米大統領が気に入らないマスコミを露骨に攻撃する姿とも重なる。安倍政権と自民党には、あからさまなマスコミへの批判やけん制が目立つ。
 公文書の改ざんや隠蔽(いんぺい)など、政権側こそが事実をねじ曲げ、隠してきた。そうした不正行為はマスコミの取材、報道によって国民の前に明らかにされてきた。
 質問する記者たちの後には国民がいる。メディアは何らひるまず、権力をただしていくだけだ。もちろん、それは地方でも同じだ。
カテゴリー: 社説


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