2019.03.17 08:00

【強制不妊救済法】被害者の反発受け止めよ

 被害者が反発する救済策にどれだけの意義があるだろう。国と国会は真剣に受け止める必要がある。
 旧優生保護法の下で障害者らに不妊手術が繰り返された問題で、自民・公明両党のワーキングチームと超党派議員連盟が救済法案を正式に決定した。4月初旬に与野党共同で国会に提出し、月内の成立、施行を目指すという。
 旧法は1948年から96年までの半世紀近くにわたり、「不良な子孫の出生防止」を掲げて障害者らの人権を踏みにじってきた。
 障害者差別に当たる条文を削除して母体保護法に改正された後も、国は20年以上、被害回復の対応を取らず、被害者は謝罪も補償も受けられずに放置されてきた。
 不妊手術は50~60年代に集中しており、被害者の高齢化や死去といった問題も深刻だ。長年にわたる非人道的被害の救済が緒に就いたこと自体は評価されていい。
 ただ、スウェーデンの補償例を参考にした1人320万円の一時金の額や、国による謝罪を巡っては被害者側の要求との隔たりが大きい。
 昨年1月以降、全国7地裁に計20人が起こした国家賠償請求訴訟の請求額は最大で3千万円台後半だ。子を持つ権利を奪われた被害者が「失った人生への対価がこれだけか」と落胆するのも無理はない。
 ハンセン病訴訟では、国賠訴訟の判決後に救済制度が確立された。隔離政策の違憲性を認定されて敗訴した国は、療養所の入所期間に応じて元患者らに800万~1400万円を支給している。
 強制不妊の訴訟は今春にも仙台地裁が初の判決を出す可能性がある。今回も判決後に、旧法の違憲性や責任の所在を踏まえた救済制度を確立するのが本来の順序ではないか。
 与党内には「参院選までに法が成立しないと、立場が持たない」との声があるという。旧法は議員立法で成立、制定した責めがあるにせよ、被害者の納得よりも政治の立場を優先しているとすれば論外である。
 法案にあるおわびの内容にも被害者側の反発は大きい。謝罪の主体が「われわれ」で、誰の責任による被害かが明記されていないためだ。
 国が不妊手術を推奨してきた経緯は、多くの資料などを通じて既に明らかになっている。超党派議連の幹部は「行政と立法は重大な間違いを犯した」と明言してもいる。責任主体があいまいでは、救済制度の根幹にも関わりはしないか。
 法案は、障害者差別を繰り返さないため、旧法を巡る問題の経緯を国会が調査するとしている。検証の在り方も重みを持とう。
 旧法下で強制不妊手術に関わった医師は、制定当時は医師からも目立った反対意見は出ていなかった、旧法に掲げられた差別意識は国民の心に植え付けられた―と指摘する。被害者を苦しめた社会の無理解には、社会全体で向き合う必要もある。
 被害者の苦痛にどう寄り添うか。政治の誠実さが問われている。
カテゴリー: 社説


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