2019.03.16 08:00

【EU離脱】英議会の威信が問われる

 英下院が英国の欧州連合(EU)離脱を6月末まで延期する政府動議を可決した。
 議会内には、昨年11月にメイ政権がEUと結んだ離脱合意案に不満がくすぶる。下院は2度、合意案を否決している。
 その影響で、市民生活や国内外の経済への影響が大きい「合意なき離脱」が今月29日に迫っていた。合意なしでもやむを得ないという強硬派がいる中、延期は下院として良識的な判断といえよう。
 メイ首相は21、22日のEU首脳会議で延期を要請するという。EU側も「合意なき離脱」は避けたい考えで、承認される公算が大きい。最悪の事態がひとまずは回避されることを願いたい。
 ただ、情勢は予断を許さない。
 延期は、下院がEUとの離脱合意案を20日までに可決することが条件になっている。3カ月は離脱の準備期間という位置付けだ。合意案があと数日で可決に変わる見通しは立っていない。
 否決されたとしてもただちに「合意なき離脱」になるわけではなく、7月以降も離脱延期の状態が続く可能性がある。EUは合意案の修正には応じない方針のため、英国は可決するまで論議と採決を繰り返すことになる。
 英国のEU離脱は域内はもちろん世界経済への影響が大きい。国民投票による民意とはいえ、自国中心主義という批判は免れまい。
 国際社会の厳しい目を踏まえればなおさら、英国は離脱に向けた速やかな手続きや合意形成を進める責任がある。ところが、メイ政権は迷走しがちで、議会も混乱が目立つ。
 特に問題になっているのは、離脱合意案のうち、英領北アイルランドと陸続きのEU加盟国アイルランドの国境管理を巡る条項だ。
 離脱すると、国境で税関検査などが必要になる。北アイルランドが自由往来を求める中、合意作業が難航。条項は、離脱後の激変緩和措置の期間である2020年末までに国境管理問題が解決しない場合、英国全体がEU関税同盟に事実上残ると定めた。これに強硬派議員が反発している。
 さまざまな意見があろうが、前例のない離脱が全て英国の思惑通りに進むことはあり得まい。意見が激しく対立しても議論を重ね、方向性を決めるのが政治の役割だ。
 日本の自動車メーカーをはじめ多くの海外資本が、英国内生産からの撤退を表明する事態になっている。先が見えない離脱劇に見切りをつけた側面が否定できない。こうした流れが続けば、英国の雇用や経済にも影響が大きいはずだ。
 英議会は「議会の母」と呼ばれ、議会制民主主義のお手本となってきた歴史がある。英国政治の威信が問われている。しっかりと合意形成し筋道をつける必要がある。
 総選挙や国民投票のやり直し論も浮上している。煮詰まる政府や議会に主権者の責任も問われる。
カテゴリー: 社説


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