2019.03.15 08:00

【印パ緊張】核保有国の自制を求める

 カシミール地方の領有権を争い、火種を抱えるインドとパキスタンに再び軍事的緊張が走った。ともに核兵器を保有する両国の全面衝突は絶対に避けなければならない。
 印パ両国は冷静になり、自制と歩み寄りの努力を尽くしてほしい。国際社会も両国に対話による沈静化を促していきたい。
 カシミール地方でインドが実効支配するジャム・カシミール州で2月、治安部隊を狙った自爆テロが発生し、40人が死亡した。パキスタンを拠点に同地方の分離・独立を掲げるイスラム過激派組織の攻撃とみられる。
 インドはパキスタンを名指しで批判し、同地方の実効支配線(停戦ライン)を越え、パキスタン側にある過激派の拠点を戦闘機で報復攻撃した。これにテロへの関与を否定するパキスタンが反撃し、戦闘機でインド軍機を撃墜。両軍機の交戦は異例で、一気に緊迫状態に陥った。
 両国は1947年に英国から分離独立して以来、カシミール地方の帰属を巡る対立を引きずってきた。同地方の支配層はインド国内の約8割に及ぶヒンズー教徒だが、住民の大多数はパキスタンの国教のイスラム教徒が占める。
 自爆テロが起きたジャム・カシミール州はインドで唯一、イスラム教徒が多数派を形成し、パキスタンに近いとされる武装勢力が過激な反政府活動を展開してきた。宗教的な対立の構図が両国の確執を根深く、複雑にさせてきた。
 両国はカシミール問題などに絡み、71年まで3度にわたる印パ戦争など紛争と報復を繰り返し、核兵器開発競争にまでエスカレートさせてきた。両国はそれぞれ100発以上の核弾頭を保有するといわれ、隣国でにらみ合い、一触即発のような緊張関係を続けてきた。
 インドとの関係改善に意欲を見せるパキスタンのカーン首相はインド側に対話を呼び掛け、「平和の意思表示」として、拘束していたインド軍機の操縦士を解放した。ただ、カーン首相は政権の座に就いた昨年の下院選挙で、インドに強硬姿勢の軍の支援を受けたとされ、対話の実現には懐疑的な目が向けられる。
 一方、71年以来となる空軍機によるパキスタン攻撃に踏み切ったインドのモディ首相は、カーン首相の秋波に応じる気配がないという。インドが過激派の情報を事前に提供したのに対し、パキスタンが存在を否定し、対策を取らなかったと批判を強めている。
 モディ首相は下院選を近くに控える。テロ対策の成果や強気のリーダーシップをアピールし、劣勢が予想される与党への支持拡大につなげたい思惑がにじむ。
 米国と中国は印パ双方に自制を促し、日本も「被爆国として座視できない」との姿勢で、情勢安定化に向けた対話を要請した。印パ両国も惨状が明らかな核戦争など望んではいまい。国際社会が仲介役を果たし、危機の収束に向かわせたい。
カテゴリー: 社説


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