2019.03.14 08:00

【春闘集中回答】賃上げ機運しぼませるな

 2019年春闘は主要企業の集中回答日を迎えた。
 自動車や電機では基本給を底上げするベースアップ(ベア)を6年連続で実施するが、前年の水準を割り込む回答が相次いだ。
 世界的な景気減速への懸念が足かせとなっていよう。国内景気は既に後退期に入ったとも指摘されている。主要企業のベア前年割れは、そうした見方を裏付けているようにも見える。
 14年以降毎年、安倍首相が経済界に賃上げを要請する「官製春闘」が「定着」してきた。これに対し、経団連の中西宏明・新会長は賃上げには前向きなものの、政府が賃上げ水準まで打ち出して要請することへの違和感を示している。
 本欄でたびたび指摘してきたように、民間企業の賃金は労使の折衝で決めるのが筋だ。経団連の脱「官製春闘」の姿勢は当然である。ただし、それが賃上げ抑制の「免罪符」となってはならない。
 ここに来ての主要企業のベア前年割れは、堅調だった世界経済の雲行きが怪しくなっていることが大きい。中国経済の減速や米中貿易摩擦の長期化、英国の欧州連合(EU)離脱など、リスク要因が増えているのは確かだろう。
 政府は現状を「戦後最長の景気拡大期」とアピールする半面、内閣府は国内景気が後退局面入りした可能性を示す速報値を発表している。専門家の判断も分かれる難しい局面であり、企業が人件費増に慎重になるのも分からないではない。
 それでも全ての国民に景気回復が実感され、消費意欲を生みだし、経済の好循環につなげるためには賃上げが欠かせないのも事実だろう。
 景気拡大期とされる期間、大企業を中心に蓄えた内部留保は過去最高を更新し、17年度で446兆円に積み上がっている。にもかかわらず、利益を人件費に回す労働分配率は6割強で43年ぶりの低水準だ。中西会長も認める通り、日本の給与水準は国際的に低い。
 経団連はベアに偏らずボーナスや諸手当など、年収ベースの賃上げ検討を促している。とはいえベアは賃金の安定的な底上げにつながる。安易にベア軽視が強まるような流れは避けたい。
 現在、不正が問題となっている毎月勤労統計は、賃上げの労使交渉でも参考とする政府資料である。ところが不正によって、賃金が実態より低めに集計されていたと指摘されている。これまでの賃上げが鈍った可能性があるのなら、問題は一層深刻である。
 中小企業の春闘はこれから本格化するが、大企業との賃金格差も依然解消されていない。
 さまざまな実情を踏まえれば、定着しつつある賃上げの機運を、このまましぼませてしまうわけにはいかない。長時間労働の抑制や非正規労働者の処遇改善など、働き方改革も重要だ。賃上げを柱に、「人への投資」を怠ってはならない。
カテゴリー: 社説


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