2019.03.11 08:00

【原発事故8年】廃炉はいまだめど立たず

 福島第1原発の廃炉にかかる時間は30~40年―。政府と東京電力が、2011年の事故後に決定した工程表には、廃炉完了までの長い道のりが記されている。
 子や孫の代までかかる途方もない時間に思われたが、事故から8年、早くも5分の1近くが過ぎた。
 最長40年は現実的な数字なのだろうか。最大の難関である1~3号機の溶け落ちた核燃料(デブリ)の取り出しは、その全体量や飛散状況さえ把握できていない。
 先月、2号機はロボットを使ってようやくデブリに触れることに成功した。大きな一歩であり、さらなる進展を期待したい。
 ただ、その先の回収技術は確立されておらず、取り出したデブリをどこにどう保管するかも決まっていない。廃炉はいまだスタート時点で足踏みをしているにすぎないといえよう。産学官による一層の研究強化が求められる。
 遅々としているのはデブリ回収だけではない。
 1~3号機では汚染水が発生し続けている。デブリは水をかけて冷やす必要があり、汚染水が発生する。それに地下水が混ざり、汚染水がさらに増える事態も起きている。
 東電は汚染水をくみ上げ、装置で放射性物質を取り除く処理をしている。ただし、トリチウムは除去できないため、このトリチウムを含む処理水は敷地内の巨大タンクに保管され続けている。
 タンクは既に900基を超え、処理水の総量は約100万トンに上る。いずれ敷地内の許容量を超えるだろう。
 政府や東電は海洋放出などを目指して地元と交渉してきたが、この水に基準値を超える他の放射性物資も残留していることが分かった。東電は公表していなかった。
 漁業関係者らは「(海洋放出の)論議の前提が崩れた」と猛反発している。当然だ。東電の無責任ぶりがまた露呈したというほかない。
 第1原発が立地する福島県大熊、双葉両町では、原発を囲むようにして国がいくつもの「中間貯蔵施設」を整備。17年10月から順次、稼働している。
 県内の除染作業ではぎ取った表土や草木を各地の仮置き場から運搬。分別して埋設し、放射能を封じ込める。対象量は約1400万立方メートルにもなるという。
 国は全て埋めた後、45年3月までに掘り出して、県外で最終処分すると約束している。だが、受け入れ先は決まっておらず、地元ではこのまま最終処分場になるのではとの疑念が渦巻く。
 周辺自治体の避難解除や復興計画は、こうしたさまざまな不安や疑問の中で進んでいるのが実態だ。それが住民の帰還を厳しくしている一つであることは否定できない。
 東電や国には住民に寄り添い、廃炉と復興支援をやり遂げる責任がある。情報の公開を徹底し、住民の不安や疑問に正面から向き合うのは、その大前提だ。
カテゴリー: 社説


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