2019.03.10 08:00

【大震災8年】一人一人の痛みを思う

 あの日から中断していた地域の祭りが住民の手で復活してきているという。神楽や獅子舞のにぎわいが戻ってきた。人と人のつながりを確かめ合い、古里の歴史や伝統を次代に受け継ぐ営みだ。
 巨大な津波と揺れが東北などを襲った東日本大震災の発生から、あすで8年を迎える。かけがえのない命、最愛の家族たちと暮らした家、地域の何もかもが自然の猛威に奪われた。
 死者は1万5千人を超え、今も2500人以上の行方が分からない。避難生活の中で命を落とす震災関連死は約3700人に上り、なお約5万2千人が全国で避難生活を強いられている。
 膨大な数の被災者や被災地域が負った傷はそれぞれに違う。復興の歩みもさまざまだ。東京電力福島第1原発事故は収束のめども立たないまま、先の見えない廃炉作業が延々と続く。そうした多くの課題をなお抱えながらも、前へ向かう地域再生の取り組みを後押ししたい。
 被害の大きかった岩手、宮城、福島の3県の17市町村では4月以降も約600世帯、1300人がプレハブ仮設住宅で住み続けなければならない見通しだ。自宅や災害公営住宅の完成を待つ人のほか、経済的困窮で行き場を見つけられない被災者が残る。高齢化も心配だ。
 生活の再建にこぎ着けられた人たちから取り残されたような、不安や焦りを募らせていることだろう。被災者をひとくくりにせず、個別の事情に寄り添った支援や心のケアが、より一層求められる段階に入っているのではないか。
 大震災をはじめ過去の自然災害を繰り返し検証し、新たな防災や災害予測に生かす作業を続けたい。災害列島に暮らす全ての住民、地域に問われるテーマだ。だが、残念ながら、この1年も地震や豪雨で甚大な被害に見舞われた。
 震度6弱が襲った昨年6月の大阪府北部地震では小学校のブロック塀が倒壊し、登校中の女児が下敷きになり亡くなった。過去の震災から、塀の安全基準は強化されていたにもかかわらず、違法状態のまま長く放置されていた。
 昨秋の北海道地震は最大震度7の強烈な揺れが、主力の火力発電所を直撃。道内全域が一斉に停電した。一極集中型の電力供給体制のもろさや、バックアップ機能の不備をさらした。ライフラインの危機管理は何度も問われてきたはずだ。
 中四国をはじめ広範囲に被害が及んだ西日本豪雨では、ため池の決壊が多発した。大震災でも農業用ダムが崩れ、住民がのまれる災害が起きていた。ため池の危険性への警戒や対策の必要性が全国で共有されてきたとは言い難い。
 復興が進み、震災の風景が減っていく半面、記憶の風化や防災意識の低下に懸念が膨らんでいる。被災者の痛み、地域の傷痕の一つ一つに思いを巡らせながら、教訓を語り継いでいきたい。
カテゴリー: 社説


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