2019.03.08 08:00

【ゴーン被告保釈】問い直された「人質司法」

 会社法違反などの罪に問われた日産自動車の前会長、カルロス・ゴーン被告が保釈された。3回目の保釈請求を東京地裁が許可した。
 東京地検が逮捕以来、勾留は100日を超えた。地裁は証拠隠滅や逃亡の恐れは大きくないと判断したようだが、否認事件の被告らの身柄を長期間拘束してきた日本の勾留制度が改めて問い直された。
 あしき慣例となって続いてきたのではないか。現行の刑事司法制度に目を向け直す機会にすべきだろう。人権上の問題に関わるだけに、国民に開かれた議論を求めたい。
 ゴーン被告は、巨額の役員報酬を実際より少なく記載した有価証券報告書を提出したほか、私的な投資の損失を日産に付け替えたなどとして逮捕・起訴された。全ての起訴内容を一貫して否認し、裁判で全面的に争う姿勢だ。
 当初の弁護人は最初の保釈請求で、居住をフランスか東京のフランス大使公邸に制限するなどと条件を提示。再請求では、都内にとどまるなどと狭めたが、地裁はいずれも退けた。関係者との口裏合わせなどの恐れがあるとみたのだろう。
 新たな弁護団は住居に監視カメラを設置し、パソコンの利用も制限するなどの条件を盛り込んだ。被告当人も嫌そうな顔をしたという厳しい制約を加えた戦略が、公判前の争点整理も始まってない段階での異例の保釈許可を引き出した格好だ。
 その新たな条件でも、証拠隠滅を防ぐ実効性に疑問が残らないわけではない。それでも、地裁が認めたのは、長期勾留に対する海外からの批判の高まりと、「検察の言いなり」と言われてきたような勾留措置を避けたいという裁判所全体の思惑が絡んだとみられる。
 刑事訴訟法は、保釈請求を原則として許可するよう規定する条文になっている。だが、実際の運用は、被告らが自白しないと保釈しない「人質司法」と問題視されてきた。
 取り調べに弁護人の立ち会いも認めない長期勾留は、捜査側が犯罪を認める虚偽の供述を強要し、冤罪(えんざい)を生むとされ、国連機関からも是正を求められている。
 そうした司法の改革議論の中、市民が参加する裁判員制度の導入などを背景に、否認事件でも裁判所が保釈を認める事例が増えてきている。最高裁も否認の要因のみで判断せず、証拠隠滅の現実的可能性を検討する方向を支持している。
 東京地裁は、ゴーン被告の共犯として起訴された前代表取締役も否認のまま保釈した。ゴーン被告の保釈許可でも「証拠隠滅を疑うに足りる相当な理由」などの不許可要件に該当するとまでは断定できない、との結論を導き出したのだろう。
 司法制度の立て付けは国によって違う。日本の司法が現行法に従い、勾留や保釈を適正に決定してきたのかが今回問われた。人権や権利を守りながら、真実を解き明かすための司法制度とはどうあるべきか。公正で、透明な議論を求めたい。

カテゴリー: 社説


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