2019.03.04 08:00

【新「圏域」構想】柔軟な選択肢が必要だ

 地方自治の本旨を損なうような「上からの押し付け」への強い警戒感がうかがえる。
 2040年ごろの人口減少を見据え、政府が新たな広域連携制度の「圏域」を検討している。この構想に全国の自治体の34%が反対し、賛成の30%を上回ったことが共同通信のアンケートで分かった。
 構想は昨年7月、総務省の有識者研究会が提言した。
 複数の市町村で構成する「圏域」を新しい行政主体として法制化。連携して住民サービスを担う態勢を整えるよう求めた。圏域への法的権限や財源の付与も提言している。
 政府は第32次地方制度調査会の主要テーマとし、来年夏までに一定の結論をまとめる方針だ。
 背景には、40年ごろの深刻な人口減少や人口構成の変動がある。
 日本の総人口は1億1千万人余りと15年より1600万人余り減少。団塊ジュニア世代が65歳以上となり、高齢者人口は約4千万人と人口の3分の1を超える。一方で、地方では9割以上の市町村で人口減少が見込まれている。
 こうした中で、自治体の職員も若年労働力が不足。医療、福祉、教育や産業振興といった「フルセット」の仕事は、市町村単独では立ち行かなくなる恐れがある。
 人口減と高齢化が先行して進む高知県でも、当然持つべき問題意識ではあろう。新たな自治体像を検討することは理解できる。
 ただ、この「圏域」には小規模市町村が「地域が衰退する」と危機感を募らせている。その下地には、合併特例債というアメと地方交付税の縮減というムチを使い、国が主導して進めた平成の大合併の経験がありはしないか。
 市町村から権限と財源の多くが「圏域」へ移るとすれば、その地域では事実上の市町村合併に近い状態となる。小さな自治体には、圏域内の中心都市に財源や権限が集中するという見方が強い。
 公共施設の見直しなどが周辺部の衰退を招いたと指摘される平成の大合併と似ている。「圏域」を具体化するのであれば、合併の功罪の検証を避けては通れまい。周辺部の市町村を置き去りにしない仕組みづくりは重要なテーマになろう。
 また、市町村側からは裁量が狭められ、地域の実情に沿った対応が難しくなるという懸念も出ている。
 現在の市町村の在り方に何らかの見直しが避けられないとしても、画一的な制度の押し付けではなく、自治体が主体性を持って選べる柔軟な選択肢が求められよう。地域を活性化して財源を確保し、独自色を維持するという自主自立の芽を摘んではならない。
 地方自治制度を転換するのであれば、第一に考えるべきは住民サービスの維持、充実である。地域の現場で住民の暮らしと向き合っている基礎自治体の知恵と意見は、十分に取り入れられて当然だ。丁寧で開かれた議論を地制調に求めたい。
カテゴリー: 社説


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