2019.03.03 08:00

【沖縄と安倍首相】政権の「誠実」がむなしい

 地域住民の意思や人権がこれほど軽視され、踏みにじられていいはずがない。「地方自治の危機」。有識者の指摘が重く響く。
 沖縄県の米軍普天間飛行場(宜野湾市)の名護市辺野古への移転に7割超が「反対」した県民投票結果を受け、玉城知事が安倍首相との会談に臨んだが、首相はやはり聞く耳を持たなかった。3回目の会談も見せかけに終わったと言うほかない。
 玉城知事は基地移設の断念と、日米両政府と沖縄による3者協議の機会を設けるよう申し入れた。これに対し首相側は「普天間の危険除去のため、辺野古埋め立てが唯一の解決策」との従来方針をみじんも変えようとせず、沖縄の訴えをかたくなに拒んだ。
 移転阻止を唱えたトップが選ばれた過去2回の県知事選に続き、県民投票結果は辺野古沿岸埋め立ての是非の一点に絞って初めて示された民意である。「新しい段階の話し合いが必要だ」と求めた玉城知事の要請は筋が通っている。これにも安倍首相は「ゼロ回答」を通した。
 沖縄の基地問題に対し、首相らが並べ立てる「真摯(しんし)」「誠実」「寄り添う」との言葉がむなしい。沖縄の揺るがない民意を受け止め、政権として新たな解決策の可能性を探るのが「誠意」ある対応だろう。少なくとも、埋め立て工事をただちに止めるべきだ。
 政府は2013年の県の埋め立て承認を移転工事の根拠にする。だが、当時の仲井真弘多知事が10年知事選で掲げた「県外移設」の公約を覆す形で、移転容認に転じた経緯がある。14年知事選では反対派の翁長雄志氏が仲井真氏を破り、県民は承認を否定した。「基地ノー」はぶれていない。
 政府は安全保障政策は国の専権事項だとし、米国との交渉も「政府が代表する」と取り合わない。政権内には沖縄が「代替案」を提示しないのは「無責任だ」と批判する声もあるという。地方に対する高圧的な姿勢が透ける。
 「国の専権事項」とはねのける一方、沖縄に「代替案」を出せと言わんばかりの態度こそ筋違いのご都合主義も甚だしい。代替案を示す責任を負うのは沖縄に過重な基地負担を強いてきた政権側だろう。「誠実」の言葉と裏腹に、沖縄の苦悩をくみ取ろうとしていない証左だ。
 辺野古移転に「反対」すれば普天間の危険が固定化され、「賛成」すれば基地の県内存続を容認したと取られかねない―。県民投票で有権者の半数近くが棄権した背景にはそんなためらいがあったのではないか。棄権者が移設を容認したと捉えるのは短絡的だ。
 日米が1996年に普天間返還で合意以降、アジアの安保環境も変化している。辺野古移設に関し米国側と点検を重ねていくことは当然の流れだ。政府が沖縄の民意をむしろ後押しにし、米国に協議を求めるのは外交上も自然な要請ではないか。沖縄の訴えは筋が通っている。
カテゴリー: 社説


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