2019.03.01 08:00

【米朝首脳会談】依然大きい双方の隔たり

 国際社会が求める「完全かつ検証可能で不可逆的な非核化」への道筋はまたも付かなかった。アジアの安定、安全に向けて粘り強い対話の継続を求めるしかあるまい。
 トランプ米大統領と北朝鮮の金正恩(キムジョンウン)朝鮮労働党委員長が、昨年6月以来2回目の首脳会談を行った。しかし、具体的な非核化措置を巡る進展はなく、物別れに終わった。
 完全な非核化を求める米国側と、一方的な核放棄には応じない構えの北朝鮮との隔たりの大きさを一層、印象づけた。
 会談後に記者会見に臨んだトランプ氏によると、北朝鮮側は核兵器の原料を製造してきた寧辺(ニョンビョン)の核施設を廃棄する代わりに、経済制裁の完全な解除を求めてきたようだ。
 高いハードルに、米国側が寧辺の核施設廃棄だけでは不十分だとして応じなかったのは当然である。
 昨年6月の首脳会談で発表したシンガポール共同声明は、非核化に向けた北朝鮮の「確固とした揺るぎのない約束」が盛り込まれた。だが、具体性を欠くあいまいな合意だったのは間違いない。
 北朝鮮はその後、具体的な行動に移しておらず、「国家核戦力」は手つかずとされる。核兵器の保有数や完成度は不明のままだ。
 北朝鮮は、寧辺の実験用黒鉛減速炉(原子炉)を使って核兵器十数個分のプルトニウムを製造したとみられている。ただ、もう一つの核兵器の原料、高濃縮ウランをどれだけ製造したのかは分かっていない。
 寧辺以外にも平壌近郊などに秘密の濃縮施設があるとされる。その数や規模で核兵器の製造量は大きく変わる。
 北朝鮮はこれまでも非核化を巡る合意を破り続けてきた。非核化に応じ、経済発展を目指すつもりがあるのならば、核・ミサイル計画の全容の申告や非核化の行程表への合意は不可欠であり、大前提だろう。
 トランプ氏にしても、首脳会談前には核兵器の温存を招くような不用意な譲歩が懸念された。
 対立する民主党が下院で多数を占め、執念を燃やす「メキシコ国境の壁」政策は停滞。ロシア疑惑捜査も大詰めとされる。議会に縛られない外交で華々しい政治ショーを演出したいとの思惑も指摘された。
 日本政府は、「米国第一」を掲げるトランプ氏が、大陸間弾道ミサイル(ICBM)の廃棄だけで制裁緩和などの手を打つことを強く懸念していた。日本を射程に収める中距離弾道ミサイルが温存されるのは「最悪のシナリオ」だ。
 3回目の首脳会談開催は不透明にせよ、米国側は「北朝鮮との関係は維持する」としている。日本としても、米朝協議の継続に積極的に関与していくべきではないか。
 拉致問題も抱える日本は、米朝首脳の初会談後も日朝協議の展望を開けていない。元徴用工問題などで冷え込んでいる韓国との関係改善をはじめ、独自に検討すべき外交の手だては多いはずだ。
カテゴリー: 社説


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