2019.02.28 08:00

【勤労統計の不正】幕引きはまだ許されない

 毎月勤労統計の不正が発覚して2カ月になる。経緯を巡る検証や疑惑の追及が続いているが、疑問は一向に解消されない。
 きのうは厚生労働省の特別監察委員会が再調査の結果を公表した。組織的な隠蔽(いんぺい)を否定した点を含め、1月の報告書から調査が大きく進んだようにはみえず、多くの国民は到底納得できないだろう。
 監察委は、厚労省が2004年に始めた統計の不正について調査し、1月に報告書を公表。だが、関係者への聴取の約7割を厚労省職員が実施し、報告書原案も職員が作成したことが発覚したため、再調査に追い込まれた。
 中立性や信頼性に欠ける検証方法をいったんは受け入れた監察委による再調査だ。弁護士による事務局を設けたとはいえ、第三者性に対する疑義が拭えないことをまず指摘しておきたい。
 再調査報告書は、統計の調査方法の変更を巡り15年に開かれた有識者検討会で、当時の担当課長らが事実と異なる虚偽の説明をしたと認定。こうした組織としての独自の判断や怠慢による不正は到底容認できないとする。
 ただし、担当課の職員らが「統計数値上の問題はない」と捉え、「深刻な不正」などとは考えていなかったと指摘。意図的に隠したとまでは認められないとして、隠蔽行為を否定した。
 幹部を含む職員らに対する聴取が調査の柱の一つではあるだろう。だが、職員らの回答や説明が全てうのみにできるとは限らない。問題を小さく見せようとする意図などが働いていたなら、果たしてそれを見抜けたのか。
 報告書は、調査計画変更の際の手続きルールの明確化、外部チェック機能の強化、統計の基本知識の習得や意識改革の徹底など、再発防止策を提言している。重要ではあるが、不正を始めた原因や背景をはじめ、まだ多くの曖昧さが残っている。
 今回の報告で終了とはならない。真実に迫るため、職員のメールのやりとりを調べるなど、より幅広い調査が欠かせない。
 毎月勤労統計を巡っては、別の問題も指摘されている。18年に変更された中規模企業の抽出方法だ。
 従来は2~3年ごとに対象企業を全て入れ替えていたが、一部を入れ替える方法に変えた。総入れ替えだと、賃金は総じて低く表れる傾向があり、併せて補正される過去分も低下するという。
 この入れ替え方法の見直しは、15年に当時の首相秘書官らが厚労省幹部と面会した際に「問題意識」を伝えたことによって、検討が始まったとされる。官邸の意向が働いていたのであれば、重大な問題だ。
 国会で野党が厳しい追及を続けているが、政府の説明は説得力に欠けるといわざるを得ない。まずは事実関係を徹底的に明らかにする必要がある。ここで幕を引けば、統計への信頼回復は望めない。
カテゴリー: 社説


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