2019.02.07 08:00

【米朝首脳再会談】対話の目的すり替えるな

 独断的で、予測不能の両トップの真意は見えにくく、その行方の危うさが拭えない。
 任期3年目のトランプ米大統領が上下両院合同会議で行った一般教書演説で、北朝鮮の金正恩(キムジョンウン)朝鮮労働党委員長との再会談を今月27、28両日、ベトナムで開催すると明らかにした。昨年6月の史上初の米朝首脳会談以来になる。
 初の首脳会談で確認した「朝鮮半島の非核化」の進展に向け、米朝トップが対話を重ねていく努力を続けてほしい。建設的な議論と相互の理解を深め、非核化と和平が一日も早く実現するよう願う。
 ただ、非核化交渉に自国優先の思惑や利害を絡め、アジアの安定、安全という本来の目的をすり替えるようでは、対話は骨抜きになり、求められる成果は得られまい。トランプ氏を取り巻く米国内の政情や経済情勢、金氏のしたたかな戦略を合わせて見通さなければならない。
 北朝鮮は核・ミサイルの開発・実験を凍結したとしながら、実質的な非核化の措置には応じていない。米国側も北朝鮮への厳しい制裁網を緩めず、核の完全放棄を迫るが、膠着(こうちゃく)状態を打開できていない。両首脳が初会談で合意した共同声明の位置付けも揺らぐ。
 米国は再会談で、北朝鮮に核・ミサイル計画の全容の申告や、関連施設の査察受け入れなどを求め、非核化措置の確約を取り付けたい構えだ。事前の実務協議では、平壌への連絡事務所設置や朝鮮戦争の終戦宣言による関係改善措置も提案しているようだ。
 一方の北朝鮮側も金氏が今年の「新年の辞」で「これ以上、核兵器をつくらない」と明言し、トランプ氏に再会談の秋波を送った。だが、非核化措置を交渉カードに、体制保証や制裁解除といった見返りの「相応の実践行動」を求める方針は変えていない。
 「北朝鮮の完全かつ検証可能で不可逆的な非核化」が譲れないとする米国側と、一方的な核放棄には応じない構えの北朝鮮との隔たりはなお大きい。金氏が核を保有し続けたまま、軍縮交渉に引き込もうとしているのではないかとの見立ても根強くある。
 トランプ氏は演説で、不法移民対策の強化や「米国再建」へ連帯を訴えたが、対立する民主党が下院で多数を占めた状況下で、内政の苦境は強まるばかりだ。執念を燃やす「メキシコ国境の壁」政策は停滞し、ロシア疑惑捜査も大詰めとされる。好調だった米国経済にも不透明感が覆い始めている。
 来年の大統領選での再選をにらみ、北朝鮮との外交成果をアピール材料にしようと、功を焦っているのではないか。そうした指摘も的外れではないだろう。
 米国のみの安全や利益を優先し、北朝鮮の核保有を容認するような譲歩も許されない。それは日本人拉致問題などの解決も遠ざける。日本も米韓との連携を再確認したい。
カテゴリー: 社説


ページトップへ