2016.02.12 10:38

政治的中立とは(下) 学生に教室貸さず政治家の講演はOK

 憲法や政治をめぐって議論や活動を進めようとすると、「政治的中立」や「偏向」がしばしば登場するようになってきた。

 これは、いったい何か。

 高知大学朝倉キャンパス(高知市曙町2丁目)でも、さざ波が立ったことがある。

 戦前の日本は、共産党関係者や支持者を「アカ」と呼んで社会から排除した。高知大学のさざ波は、それを思い出させるような出来事だった。

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 「ちゃぶだい」という高知大生の団体があった。

 2年前の2014年春、その学生たちの企画に対し、大学側が「ストップ」をかけた。「政党色が濃い」が理由だったという。

 発端はその2カ月前にあった。

 学生たちは沖縄県の地元紙から資料を借り、米軍基地に関するパネル展を開いた。それを共産党系の「高知民報」が「日本民主青年同盟(民青)」の取り組みと報じ、波紋が広がった。

 民青は事実上、共産党の青年組織である。

 この後、学生たちは福島原発事故の映画会を企画した。

 問題はそこで起きる。

 学内で会場を借りようとした時、担当課の課長から「君たちは民青だから」と拒否されたという。

 4年生のメンバーは振り返る。

 「確かに民青もいた。でも、別の団体として活動していたのに」

 仮にメンバーに民青がいたとしてもそれだけで拒否するのは納得いかない、活動内容で判断して―。

 そう訴える学生。

 拒否を繰り返す課長。

 学生側が当時残した詳細な記録によると、課長は「(学生は)何色にも染まっちゃいかん。大学の中は真っ白にしておきたい」「学外で活動すればいい」「(あなたたちの活動は)害ですよ」と発言したという。

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 結局、教員の仲介で教室を借り、映画会は開かれた。課長は映画会に来なかったが、「一方的な内容だ。東電側の意見も聞くべきだ」と学生に伝えたという。

 秋の大学祭では原爆展の企画も認められなかった。

 その際も、学生と担当課はやりとりしている。学生の記録によると、女子学生とこんな問答もあった。

 学生「(学生に)ふさわしい活動って何ですか?」
 課長「授業の発展とか文化とかスポーツとか、学生の成長につながることよね」
 学生「平和を考える授業(『平和と軍縮』)もあります」
 課長「あなたたち、しっかり考えてよ。大学生なんだから。生徒じゃないんだから。平和を考えるのと活動するのとは違いますよ」

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 高知大生の団体「ちゃぶだい」が教室を借りることができなくなっていた2014年6月、大学で政治家の講演があった。

 安倍内閣で文部科学副大臣を務めた高知1区選出の衆院議員、福井照氏(現在は比例四国選出)。福井氏によると、脇口宏学長から依頼されたという。

 主催者の大学はメールなどで学生に参加を呼び掛け、大教室は300人近い職員や学生で満席になった。脇口学長はあいさつで「政治の世界で生きてきた福井先生がどんな話をされるのか。諸君の今後に生かしてほしい」と語っている。

 「ちゃぶだい」メンバーは当時、「政治家は良くて、なぜ自分たちは駄目なのか」と思い、言いようのない感情を抱いたという。

 活動はその後、自然消滅した。

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 学生の団体やサークルについて、高知大学にはどんなルールがあるのか。「大学の中は真っ白に」といった言葉の真意は何か。

 それを知ろうと、いまは別の部署に移っている当時の課長をキャンパスに訪ねた。

 カウンター越しに元課長は言う。

 「資料もないし、記憶もない。申し上げることはありません」

 事前の電話でも同じ対応だった。

 記者が「このままだと学生側の言い分だけになってしまいます」と問い掛けると―。

 「そんな一方の言い分だけ載せるなんて、おかしいですよ」




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