2019.01.20 08:00

【沖縄の県民投票】「総意」が反映できてこそ

 沖縄県の米軍普天間飛行場(宜野湾市)を名護市辺野古に移設することの賛否を問う県民投票が、全県で実施できない状況に陥っている。全41市町村のうち、宜野湾市など5市が不参加の方針を決めたためだ。
 5市の各市議会が関連予算案を否決するなどして反対した。その議決を踏まえる形で各市長が不参加を表明した。5市を合わせた有権者は約36万人に上る。同じ県民でありながら、約3割もの有権者が投票の権利を得られなくなる。
 地方自治法で規定される住民投票は、首長と議会の二元代表制を補い、地域の将来を左右するような重要課題に民意を反映させる民主主義の制度である。その意思表示の機会は、全ての有権者に等しく与えられなければならない。
 県民投票は、沖縄の市民グループが民意に基づく基地移設の可否の判断を求め県に直接請求し、県が条例を提案、県議会が可決、成立した。請求の署名は必要数の約2万3千筆を大きく上回る約9万3千人分に達し、県と県議会が県民世論の高まりを受け止めた決定といえる。
 不参加を決めた市長は「結果によっては普天間への固定化につながる懸念が強い」「国の専権事項だ」などと反対理由を挙げる。その5市はいずれも、基地移設を進める安倍政権との関係が近いとされ、政治的な思惑も透けて見えそうだ。
 投票条例は、投票者名簿の作成や投開票の事務などを市町村が処理すると定める。議会で予算案が否決されても、地方自治法の規定により、首長が最終判断すれば、自治体は議会の議決を経ずに予算を執行できる。与那国町は議会が予算案を否決したが、町長は投票に参加する意向だという。
 意思表示の権利を失う5市の住民らが投票権を侵害されるとして、各市を提訴する構えだ。投票条例を請求した市民グループの代表はハンガーストライキをしながら、全自治体の参加を求めて新たな署名を集めている。5市の不参加の判断が、それぞれの市民の意思をどれほど反映しているのかが問われよう。
 全県民が参加できない投票は、賛否のどちらが多数になっても、「県民の総意」としての正当性に疑義が指摘されかねない。憲法の精神や民主主義にのっとり、法律に基づいて決まった住民投票が、政治的な利害などでゆがめられるような事態は避けなければならない。
 玉城デニー知事は5市に住民投票の意義や必要性を丹念に説き、協力を得られるよう尽くす責務がある。5市長も県と真摯(しんし)に向き合い、市民の思いをなお広くくみ上げる努力を続けてほしい。2月24日の投票日まで時間はある。
 沖縄県民は知事選で2度にわたり「基地ノー」を明示してなお、県民投票に踏み切らなければならない。その苦悩をよそに、政権は基地建設を強行し続ける。沖縄に分断と対立を生み、溝を深める政権の責任の重さこそ問われるべきではないか。
カテゴリー: 社説


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