2019.01.11 08:00

【勤労統計】厚労省の姿勢を疑う

 賃金や労働時間などの動向を把握する国の「毎月勤労統計」調査が、15年間も不適切に実施されていたことが分かった。
 担当する厚生労働省が、調査する事業所の数を規定より減らしていた上、正しく装うため、データ処理に工作を施していた。
 勤労統計は、国の指標や政策にとって重要な「基幹統計」の一つだ。国内総生産(GDP)の算出に利用されるほか、雇用保険の失業給付の上限額や最低賃金の改定論議にも関係する。
 数値が誤っていたとなれば影響は計り知れず、日本の経済統計の信用にもかかわる問題だ。
 厚労省を巡っては、昨年も裁量労働制の労働時間調査で不適切なデータ処理が発覚。障害者雇用率の調査でも、各省庁の不適切な計上をチェックできていなかった。
 大きな反省が求められてきたが、偽装さえ疑われる今回はさらにたちが悪い。厚労省の官僚らの姿勢が疑われる。
 なぜ不適切な調査が行われてきたのか。国民生活への影響はどれだけあるのか。厚労省はきょうにも判明した事実を公表するが、全容の解明と対策を急ぐ必要がある。
 勤労統計は毎月、従業員500人以上の事業所の賃金や労働時間を都道府県を通じて調べる。問題になっているのは東京都内分の調査だ。約1400事業所あるが、3分の1程度しか調べていなかった。
 担当者が2004年に調査手法を変更し、その後も引き継がれてきたとみられる。数が多いため抽出方式に変えた可能性を指摘する省内の声もあるが、現時点では詳細は明らかになっていない。
 しかも、単なる「手抜き」仕事とは言い難い。全数調査に近づくよう見せかけるためなのか、データの補正ソフトも作成されていた。厚労省が組織的に偽装を行っていたと疑われても仕方がない。
 根本厚生労働相の対応も理解に苦しむ。先月20日に事態の報告を受けたというが、同省は翌21日に問題を伏せたまま昨年10月分の統計(確報値)をそのまま発表している。
 その後、28日に問題が公になった。根本氏は「きちんと調べた上で対応するのが適切だ」と釈明するが、あまりに無責任だ。
 失業給付は少なくとも数百億円の過少給付になっている恐れがあるという。政府は19年度予算案の組み替えを検討しているが、どう修正し、どう不足分を払うのか国民に丁寧に説明しなければならない。
 調査方法の改善も急がれる。今月9日に公表された昨年11月分の統計(速報値)も修正できず、不適切データを使った。このままでは影響が広がるばかりだ。
 統計部門の人材不足を指摘する専門家もいる。厚労省は健康や労働という国民生活の質に関わる重要政策を担う。「適当」は許されない。組織の体制や意識の抜本改革を改めて求めたい。
カテゴリー: 社説


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