2019.01.05 08:40

95歳画家なお意欲 土佐清水の元船員 井上さん 四万十町で最新作集め個展

「癒やしを感じてもらえる絵を描きたい」と話す井上明敏さん(高知県高岡郡四万十町本町のギャラリー556)
「癒やしを感じてもらえる絵を描きたい」と話す井上明敏さん(高知県高岡郡四万十町本町のギャラリー556)

 元船員で、78歳にして筆を握った“異色の油彩画家”が、御年95になっても新たな題材に挑み続けている。高知県土佐清水市小江町の井上明敏さん。1月4日には、高岡郡四万十町で個展が開幕し、「昨年末までの半年で仕上げた」という四万十川の沈下橋の作品10点などを展示中だ。「描きたいものばっかりで困るよ」。亥(い)年生まれの年男の創作意欲は尽きない。

 井上さんは、無線電信講習所(東京)を卒業。トロール船や戦時中の徴用船を経て、マグロ船の無線長になった。60歳で引退後、母親を介護しながら好きだった絵を始めた。

 独学で磨いた写実的なタッチで描いた作品は、足摺岬など古里の風景を中心に300点近く。光を表現した繊細な筆遣いが特長で、デッサンなしで一気に仕上げるのが井上流だ。切り立った断崖が連なる叶崎、木漏れ日の差す緑豊かな小道などモチーフもさまざま。今年11月の「ねんりんピック」(和歌山)の推薦作にも選ばれている。

 沈下橋との出合いは昨春。同町内の観光物産センターに飾っていた写真に心を動かされた。交流のある同町の画家、山本哲資(のりよし)さん(75)に資料写真の撮影を頼み、一気に描いた。

 80号の大作を中心にした作品群は臨場感たっぷり。光を浴びた水中の石や、水面(みなも)に映る木々の緑など「四万十川の清流感にこだわって」細部まで表現している。

 指導の依頼も後を絶たない井上さん。絵という「生きがい」との出合いについて、「無線士になれたおかげよね」と話す。

 1944年、旧陸軍第11師団(香川県善通寺市)に入隊。中国各地を転戦したが、司令部付き通信員だったため最前線には送られず、捕虜生活の後に復員できた。「通信隊でなければ命はなかったし、マグロ船で世界を巡ることもなかった」と振り返り、「出会ってきた人々のおかげで、今がある。みんなを癒やせるような絵を描きたい」と力を込めた。

 個展は、山本さんが主宰する「ギャラリー556」で15日まで。水曜定休。問い合わせは「ギャラリー556」(090・4503・0651)へ。(横田宰成)

カテゴリー: 主要文化・芸能高幡幡多


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