2019.01.04 08:00

【新年に外交】対話と協調を導きたい

 力ではなく、対話によって妥協点を探り出していく。2度の大戦や東西冷戦を経て、国際社会が追求してきた和平のプロセスだ。だが、現状は大国が覇権争いを激化させ、多国間の協調の枠組みを揺るがす。
 米中、米ロの対立と相互不信が深まり、「新冷戦」さえ指摘されるほど国際協調や安全保障環境が不安定化している。不戦の誓いに立ってきた日本が、国際社会で果たすべき役割も問われている。
 日本の外交・安保政策の基軸である日米同盟はトランプ米政権の下、信頼関係の土台が変容しかねない状況だ。「米国第一」の保護主義を振り回してはばからないトランプ氏は、同盟国の日本や欧州にも見境なく安保政策や通商で圧力をかけ、負担を求める。
 貿易問題に絡め米国製武器の購入要求も強める。日本の防衛予算の増大につながっているのは明らかだ。だが、専守防衛を逸脱するような装備拡張は許されない。米軍を「矛」、自衛隊を「盾」とする同盟の原則を堅持し、米国と重ねて確認し合わなければならない。 
 沖縄県・尖閣諸島の国有化で対話が冷え込んでいた日中は昨秋、「競争から協調」などをうたう新たな関係構築を誓った。歴史認識でもなお根深いあつれきを残す中国が友好姿勢に転じたのは、「貿易戦争」に陥った米国と、日本の同盟関係を見透かしているからだ。
 尖閣問題などデリケートな課題を脇に置いた合意にもろさは拭えない。日本は米国との間合いに腐心しながらのかじ取りを迫られるが、つながり始めた関係改善の流れを粘り強く広げていきたい。
 ロシアとの北方領土交渉にも、米国との同盟が色濃く影を落とす。プーチン大統領は北方領土を返還した後の米軍展開への警戒を持ち出し、日本を試す。安倍政権は功を焦らず、ロシアと信頼関係を深める対話を続けるほかないだろう。
 北朝鮮問題では昨年、米朝首脳会談が実現し、「朝鮮半島の完全非核化」を盛り込んだ共同声明が交わされた。だが、その後の具体的な進展はなく、日本人拉致問題も解決の糸口が見いだせない。日米韓の結束を深化させながら、北朝鮮との直接対話をたぐり寄せたい。
 その拉致問題やアジアの繁栄のためにも連携が不可欠な韓国との火種が絶えない。従軍慰安婦や元徴用工の問題が再燃し、韓国海軍駆逐艦による自衛隊機への火器管制レーダー照射が新たな不協和音として加わった。韓国の国民感情なども絡み、折り合いは一筋縄ではいかない。
 対話による交渉は手間も、時間もかかる。その労をいとうトランプ米政権の独断外交や大国の力の敵対が緊張を広げ、日本の外交や安保にも不穏な影響を及ぼしている。
 日本は戦争を放棄し、平和主義を貫いてきた歴史がある。その日本こそが今、国際社会で対話外交の道筋を説き、協調を導く役割を担うべき時ではないか。
カテゴリー: 社説

ページトップへ